“政治家の夫”と考える共働き 妻の当選で転職・家事育児に奔走「男女関係なくどちらかが我慢するのは違う」
■少ない女性政治家「開拓者のつもり。ブルドーザーのようにやっている」
「政治家の夫」という立場の人に、日本ではなかなか出会えない。祐也さんも「すごく珍しがられる。『なんなんだろう』『想像できない』みたいな。妻がSNSとかで誹謗中傷されると、子どもが将来それを目にしたらどうなるんだろうと心配」という。夏帆さんも「いろいろなご意見をいただくが、家族のことを言われたり、身の危険を感じるようなことがあると、どうしようとなる」と悩む。それでも夏帆さんは、女性政治家が増えてほしいという思いが強く「開拓者のつもりで、ブルドーザーのようにやっている。2人目と3人目の子どもは任期中に生んでいるし、周りも『赤ちゃんが議会にやってきた』みたいな感じで徐々に慣れていく。2人目の時はみんな驚いていたけど、3人目の時は私が知らない間に抱っこされていた」と語った。 妻を支えるためとはいえ、自身の仕事が大きく変わったことに祐也さんなりの葛藤はある。「中途半端な状態で仕事が中断されて、家庭の事情で帰らなきゃいけないという時がある。今まではコミットしていた人間が、仕事を切り上げて帰る申し訳なさも感じる。ただ世の子育て夫婦には葛藤があるし、折り合いをつけてやっている」。夏帆さんも、そのサポートに対しては感謝し、政治活動を続ける上で「おそらく誰かのサポートが必要。うちの場合は夫だけじゃなくて、夫の母親や私の母親、妹などにお願いしている状況。誰かが手伝ってくれる状況じゃないと、なかなかこの仕事をするのは難しいが、それは男女どっちでも一緒」とした。 また元明石市長・泉房穂氏も「どちらにしてもハードルを下げていかないと。普通の生活をしながら、ある日突然、政治家になれた方がいいと私は思う。女性の政治家は明らかにここ数年で増えてきている」と述べた。
■理想の夫婦、再現性は?「どうしても『すげえ』と思ってしまう」
奮闘する本多夫妻だが、これでは女性の政治家を増やすためのモデルとしては「再現性に乏しい」としたのがリザプロ社長・孫辰洋氏だ。2人の関係を理想的な形としつつ「女性議員を増やす、かつ子育てと両立する、かつ旦那さんのキャリアも大事にするのは不可能に近いのでは。男性として、どうしても『祐也さん、すげえ』と思ってしまう。理解がある夫、理解がある実家、理解がある職場、この3つの条件が揃ってないと成立しない。それに例えば祐也さんが『俺もキャリアを追求したい』となった時にどうするのか?」と指摘した。 これに夏帆さんは「常にディスカッションしている。今、夫がキャリアの部分で仕事も一生懸命やりたいという状況になったとして、私が議員の仕事をセーブするのはなかなか難しいが、その他のことをセーブする。子育てを誰かに手伝ってもらうかとか、そこは常にディスカッションを続けている。正解は確かにないが、いろんなパターンがある」と答えた。また、泉氏も「去年、明石市の市議会議員で、女性2人が立候補、圧勝したが、口説いた時の私のセリフは『もうそのままの生活でやったらいいよ』。別に過度なことをしなくていいし、議会の古いしきたりに従わなくてもいい。逆にそれに意味がある」とも語った。