TPP大筋同意 国内でも今後続く「タフな交渉」
損をするのは農林水産業?
TPPの発行は、大筋合意されたことにより国会承認手続きが必要ですが、その手続きが来年夏以降に見送られる可能性も出てきています。自民党の二階俊博総務会長は10月23日の記者会見で、通常国会での処理にこだわらない考えを示すなど、慎重な発言が続いているためです。農業団体をはじめとする反対も根強く、来年7月の参院選で不利になるからだという見方のようです。 実際に、10月25日に行われた任期満了に伴う宮城県議選では、自民党が1議席減の27議席で、目標とした単独過半数に届かない一方、安全保障関連法や環太平洋連携協定(TPP)、原発再稼働への反対を主張した共産党が前回の4議席から8議席へと議席を伸ばしました。TPPに反対する組織、業界団体の票が共産党に流れたという側面もあると考えられます。 地方の農業へのケアは政治的にも重要なテーマになっていくでしょう。なぜなら内閣府の試算でも「関税撤廃に伴い、農林水産物の生産額が3.0兆円減少する」としているからです。 実際に、2013年4月の交渉開始時には衆参両院の農林水産委員会が重要5項目(コメ、麦、乳製品、甘味資源作物、牛肉・豚肉)などを、関税撤廃対象から除外する「聖域」とするよう政府に求めていました。これらは日本の食文化に影響を与えるという点以上に、関税障壁によって保護されてきた項目といえます。交渉の結果、5項目は関税分類で586品目になりますが、そのうちの412品目が、関税撤廃の例外となりました。完全撤廃ではなくなったことを踏まえると、農林水産物の「3.0兆円減」という試算は、ある程度緩和されることでしょう。 さらに試算では、その生産減少額も含めたトータルの数字として、日本経済全体では、実質GDPが0.66%、3.2兆円分底上げされるとも示されていました。 「政府統一試算はGTAPモデルというマクロ経済モデルで行いましたが、仮に10年間で関税を撤廃した場合、10年間の累積効果で3.2兆円と示しているものではありません。貿易自由化による経済効果を経済構造調整を終えた時点で、自由化しなかった場合と比較した結果、3.2兆円の底上げ効果があり、それが継続すると解釈するものです」(内閣官房TTP政府対策本部担当者) また、PECC(太平洋経済協力会議)の国際共同研究によれば、関税撤廃に加えて、非関税措置の削減や投資・サービスの自由化などを含めると、TPPに日本が参加した場合の経済効果は、実質GDPの2%増、約10兆円の底上げがされると示されています。