豊洲移転、コロナ対策に東京五輪......。「小池都政」8年間の通信簿
「革新都政をつくる会」の中山 伸氏はどう見ているのか。 「小池都政の評価は、地方自治法で定められている『地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本とする』ということを基準に考えられると思います。 衣食住は生活の基本ですが、東京都は新規の都営住宅を造っていません。ゼロです。住むところがないと職を得ることが難しい。例えば、派遣切りに遭って住んでいた寮から追い出されると、住むところがなくなって路上生活になってしまうケースがあります。そうなると仕事がさらに見つからなくなります。 また、障害者の福祉手当も27年間で1円も上がっていないのです。弱者の視点が足りないのです。 私立を含むすべての高校や都立大学の授業料実質無償化や公立小中学校の給食無償化、18歳以下の都民に月5000円の支給など、ある程度評価できる政策もありますが、これは子供の貧困問題などが起きて、住民運動が起こり、世論が高まって条例化されたんだと思います。 しかし、例えば公立小中学校の給食無償化についていえば、都の負担は2分の1なんです。もう2分の1は各区市町村が負担しなければいけません。すると、財源があるところは無償化できるけれども、財源がないところは無償化は難しい。多摩地区は無償化になっていないところが多いんじゃないでしょうか。 また、高校や都立大学の授業料無償化についても、東京に住んでいる学生は無償だけれども、東京に住んでいない学生は有償です。同じクラスの中に有償者と無償者がいるというのは、ちょっとおかしい気がします。 都庁のプロジェクションマッピングも、海外から来た人にアンケートを取ったら『昼間は行くところがあるけれども、夜になると行くところがあまりない』ということで実施されたと聞いています。 2年間で約48億円というお金の使い方もそうですが、光の当て方も違うと思います。都庁に当てるのではなく、もっと足元に当ててほしい。新宿都庁下のスペースでは、NPOが毎週、生活困窮者向けに無料で食事を提供しています。そこには約700人が食事を求めて来るといいます。そちらにも目を向けてほしいと願っています」 有識者からは小池都政に厳しい評価を下す声が聞こえてきたが、都民はどうなのだろう。 東京に住む18歳から99歳以下の男女500人にアンケートを取ったところ「小池都政を評価する」が48.4%で、「評価しない」が51.6%と拮抗した。 「評価する」の主な理由は「東京五輪を中止でなく延期してでも開催できたこと」「コロナのときに国より早く支援があったこと」などのほかに「高校の授業料無償化。高校生の子供がいるのでありがたい」「東京都が無償でお米を配ったこと」「東京都で生まれた子供に10万円のギフト(育児用品など)がもらえること」「18歳以下の都民に月5000円の支給」など、経済的な政策を支持する意見が多かった。 6月20日告示・7月7日投開票の東京都知事選挙。小池都知事は、どんな公約を掲げるのだろうか。ぜひ注目してみたい。 取材・文/村上隆保 写真/時事通信社