【大相撲大賞】大関大の里、最速記録を次々更新 出世も早く勝負も速い「まばたき厳禁で賞」
横綱照ノ富士の初場所優勝に始まり、尊富士の110年ぶり新入幕優勝など、今年も大相撲でさまざまな出来事が起きた。中でも初土俵から所要7場所での幕内優勝、同9場所での大関昇進など、最速記録を次々と更新した大関大の里(24=二所ノ関)は今年の顔。今年全6場所で幕内を務めた29人の力士を対象とした年末恒例の「第13回日刊スポーツ大相撲大賞」も、第1回は大関昇進伝達式の口上になぞり、大の里の「唯一無二」ぶりを紹介する。 【一覧】2024年「スピードスター賞」その1 ◇ ◇ ◇ ◇ 出世も早かったが、勝負も速かった。大の里が6場所全て幕内だった力士の中で最も取組時間が短く、不戦勝だった2番を除いた全88番の平均は実に4秒6。昨年まで2年連続で最短だった阿炎を5秒04の2位に退け「まばたき厳禁で賞」に輝いた。勝った取組の平均4秒46も最短。白星平均の短さは、同じく2位に阿炎、3位に隆の勝、4位に豪ノ山と、一気に勝負を決めたい押し相撲の力士が名を連ねた。それらを差し置き、右差しが基本の大の里がトップは異色の結果だ。 大の里は押し出し、押し倒しによる白星が最も多い「押しの一手賞」でもあった。押しによる白星は計31勝。押しの威力に定評のある2位玉鷲の27勝、3位隆の勝の24勝を上回った。立ち合いからの圧力で一気に勝負を決めたり、左をおっつけたり。右差しを狙いつつ、まわしにはこだわらない。未完成で粗削りだが、師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)が「相手をグチャッとつぶすような」と指導した、圧力のすさまじさを物語る結果となった。 さらにファン投票で選出される「敢闘精神」では、各日の3傑に最多の44度も名を連ねた。取組時間は短く、技でファンを魅了するタイプではない。それでも“顧客満足度”は抜群。史上初の“ちょんまげ大関”となった昇進伝達式で「唯一無二の力士を目指し、相撲道に精進します」と誓った通り、前例のない道を歩んでいる。【高田文太】