ママ友コンビ、型破りな挑戦 呉冷麺の本場で広島風つけ麺の店開業 「頑張り次第で1+1が3にも4にも」
商売の経験がなかったママ友2人が、広島県呉市の中心部に広島風つけ麺の店を開いた。呉冷麺の本場の地元では、あまりなじみのないメニュー。しかも店舗は集客面で不利とされる2階に置いた。子育て中のため営業はランチ時間だけだ。「うまくいかんよ」との声にも、2人は意に介さない。「私たちの理想を、店にぶつける」。券売機を模した奇抜な店のドアと同様、型破りなスタイルで挑戦する。 【写真】広島風つけ麺の店「1+1=いちいち」 券売機をあしらった店舗入り口のドア 店名は「1+1=いちいち」で、元日にオープンした。オーナーの中村麻奈美さん(36)と、マネジャーの寺田由紀恵さん(37)が切り盛りする。 2人は子どもが所属するソフトボールチームで出会った。食の好みが合い、一緒に焼き肉やラーメンを食べ歩いた。寺田さんが驚いたのは、ママ友会で中村さんが振る舞う料理のおいしさ。数年前、思わず提案した。「飲食店を開いてみたら。付いていくよ」 当時は新型コロナウイルス禍で飲食店開業に逆風だったが、努力家の2人はものともしなかった。「昼から牛肉を堪能できる店が欲しい」。中村さんは広島市内の焼き肉店で腕を磨き、寺田さんはマーケティングなどを独学で習得。2022年、呉市内に焼き肉定食店「㐂(さんなな)」をオープンした。1500~3千円と、昼定食では強気の価格帯で勝負する。 メニュー開発で慎重派の中村さんが「在庫を抱えたくない」と悩むと、行動派の寺田さんが「余れば私が買い取るから」と説得した。寺田さんは「性格が真逆で互いに思いが強い分、よくけんかをした。そこから前進する」と苦笑い。中村さんが賄いで提供した広島風つけ麺を寺田さんが気に入り、2店舗目のオープンを決めた。 店舗は2階で家賃を抑える分、個性的なドアで客を引きつける戦略。たれは有名店を研究した。中村さんは「やりたいことをやれるだけで幸せ」と話す。店名は、焼き肉定食店で「どのメニューも『いちいち』おいしいね」と褒められたことが由来の一つ。もうひとつ込めた思いは、2人の無限大の可能性。「頑張り次第で1+1は3にも4にもなる」。頭に描く計算式もまた、型破りだ。
中国新聞社