【ロシアの脅威に覚醒】ポーランドとバルト諸国が国境を要塞化 ウクライナは防波堤になりえるか
スラボミール・シェラコウスキー(ポーランドの評論家)が、ポーランドとバルト諸国がロシアのウクライナ侵略の衝撃によってロシアの脅威に覚醒し、東部国境の要塞化を進めている様子を描写する論説を2024年6月4日付のProject Syndicateに書いている。 如何なる安全の保証を西側諸国から得ようとも、ほとんどのポーランド人は自ら自国を守る必要があると信じている。北大西洋条約機構(NATO)条約5条によれば、NATOの一国に対する攻撃はすべての加盟国に対する攻撃とされ、この相互防衛に対する信頼はポーランドではなお強い。 ウクライナ戦争のエスカレーションが最大の恐怖の一つだという米国とドイツの指導者が一貫して発するシグナルは、NATOによる安全の保証に対する確信を強めることにはなっていない。例えば、ロシアがエストニアに侵攻した場合に、米国やドイツがどのように対応するのか明確でない。 ポーランドとバルト諸国は武装するだけでなく、ロシア、ベラルーシおよび一部ウクライナとの国境沿いを要塞化することに資源を投入することを決定した。ポーランドでは、この計画を首相の名前をかりて「Tusk Line」として28年までに完成させる予定である。 重要なことは、ポーランド国民に国の防衛のために大きな財政的犠牲を払う用意があることである。さらには、ポーランドは欧州連合(EU)の支援を当てにしている。 EUではロシアの脅威についての認識が高まっている。ポーランドのロシアおよびベラルーシとの国境はEUの東部国境でもあるので、EUの共同の努力によって守ることは理にかなっている。
ポーランドとバルト諸国はフィンランドとは戦略的立場を異にする。フィンランドは優秀な陸軍、十分に訓練された国民および多数の爆弾シェルターを誇るだけでなく、その広大で人口希薄な森林に覆われた地勢が侵攻する軍を悩ますことになる。従って、フィンランドは敵を自国領内に侵入させてもなお効果的な防御を仕掛けることが出来る。 対照的に、バルト諸国は、侵攻軍が彼等の領域に突っ込むことを阻止するために、彼等の東部国境に連結された要塞、「Baltic Defense Line」を必要とすると決定した。最近合意された共同計画では、エストニアだけで約600の要塞化された掩蔽壕を6400万ドルで建設し、リトアニアには18の「counter-mobility parks」(対人および対車両防御装置の緊急展開拠点)を設置する。 ポーランドの「Tusk Line」は同様な形で構築されるが、約700キロメートルの自然のガードレールを作ることにもっと重点が置かれる。自然の障害物を十二分に活用し、新たな障害物を作り、もってポーランド軍が安全で効果的な堡塁を設け、奇襲を計画し、補給センターを整備し、敵軍を防御し辛い状況に導くことが出来るようにする必要がある。また、ポーランドは対ドローン防御、衛星、空中偵察に大きく依存することとなろう。 フィンランド、バルト諸国、ポーランドの東部防衛計画は相互に整合的である。何故なら、彼等は基本的目標を共有しているからである。これらの防衛計画はEUとの密接な協議の下で進められつつある。EUでは欧州の兵器産業を調整し再編するために新たに共同防衛担当の欧州委員を設ける努力が進行中である。 しかし、ロシアに対して戦うウクライナを十分に支援しなければ、如何なる計画もEUの安全を確保出来ない。もし、ロシア軍がウクライナを支配すれば、それはポーランド、フィンランド、バルト諸国の計画すべてを掘り崩すであろう。 バルト諸国及び「Tusk Line」が構築されるまでには何年も要するので、ウクライナの戦場が依然として最優先課題となろう。 * * *