トー横相談施設、逮捕者や暴言も 入りやすさか安全か 続く試行錯誤
東京都新宿区歌舞伎町の「トー横」と呼ばれる一帯で、若者が犯罪に巻き込まれるケースが相次ぐ現状を受け、都が相談施設を近くにつくってからまもなく半年。利用条件を厳しくせずに来訪を促す一方で、安全を守るという容易でない取り組みだ。逮捕者が出るなどトラブルも起きたが、識者は「トラブルの根絶をめざすのではなく、試行錯誤を重ねるべきだ」と若者への支援の継続を求めている。 【写真】都の相談施設「きみまも」の室内。ソファやテーブルが置かれ、利用者が気軽に休憩できるようになっている=2024年5月30日午後3時0分、東京都新宿区歌舞伎町2丁目、松田果穂撮影 10月下旬の平日未明。トー横では、多くの若者が路上であぐらをかいて喫煙したり、持参したソファに座って飲酒したりしていた。スピーカーで大音量の音楽を流す人も。 自宅や学校に居場所のない若者が全国から集まるようになったのは2019年ごろ。騒音や市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)、売春、心中が続き、社会問題化した。警察が補導を繰り返し、都や区が見回りをしても解決せず、少年少女が犯罪に巻き込まれかねない状況が続く。 ■充電器、カップ麺も用意 一つの解決策として、都が近くのビルに相談施設「きみまも@歌舞伎町」を開いたのは今年5月31日。約200平方メートルのスペースに休憩所や相談ルームを設けた。児童相談所などと連携し、若者が自宅に戻れるようにしたり、就学・就労を促したりするのが目的だ。 対応は火曜日~土曜日の午後3~9時。委託先の社会福祉法人が運営し、社会福祉士や公認心理師ら5人が常駐して、話し相手をする。 対象は30代まで。1月に10日間だけ開設した「臨時相談窓口」の利用者185人のうち20代が多く、30代もいたため未成年に限定しなかったという。 若者が足を運びやすい環境の整備をめざした。開設当初は氏名や住所を申請する必要がなく、スマートフォンの充電器のほか、菓子やカップ麺を無料提供した。毛布やヘアアイロンも置いた。 都は1カ月の利用者を延べ300人と想定。常駐スタッフは5人と決めた。 ただ、開設直後から利用者は右肩上がりで増えた。6月は延べ444人、7月は同1138人。当時は入場制限をしておらず、同じ時間帯に50人超がいたこともあった。都は「1人ずつに目を配れないことがあった」という。 これまでに3回利用したという埼玉県の高校3年の少女は取材に「寝るために使った」と話す。トー横で遊び、疲れたら休みに来る――。そんな場所だった。こうした利用をしていた友人は少なくなかったという。 ■リストカット、ひわいな行為…… トラブルも相次いだ。施設の関係者によると、利用者による売春をほのめかす会話▽リストカット▽オーバードーズ▽職員や見回りにきた警察官への暴言――など。7月には、他の利用者の前で少女らとわいせつな行為をしたとして、20代の男2人が逮捕された(その後、ともに不起訴処分)。
朝日新聞社