大統領「公認指示し任期中に実行」…朴槿恵元大統領は共謀だけで有罪
【集中分析】公職選挙法違反の有無、公訴時効、判例
尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が2022年5月9日、キム・ヨンソン前議員の補欠選挙での公認を巡り、自ら公認を指示したという内容が含まれた肉声の録音が公開された。録音内容によると、大統領当選者時代に公認介入が行われ、大統領任期中に実行(公認確定)された。当選者の法的地位、公職選挙法に違反するかどうか、公訴時効などを、関連法令と憲法裁判所・裁判所の判例をもとに分析した。 共に民主党のパク・チャンデ院内代表は31日午前9時30分、ソウル汝矣島の国会院内代表室で緊急記者会見を行い、尹大統領と公認・国政介入疑惑の中心人物であるミョン・テギュン氏の通話録音を公開した。 この対話で尹大統領はミョン氏に「公管委(公認管理委員会)が私に持ってきたので、『キム・ヨンソンが(大統領選挙候補を選ぶための)党内予備選挙の時も一生懸命やってくれたから、それ(公認)はキム・ヨンソンに決めてほしい』と言った」と語った。2021年の「国民の力」の大統領選候補選びの過程で、キム・ヨンソン前議員が積極的に協力したから、同党の公認管理委員会にキム前議員を公認するよう指示したということだ。国民の力の6・1再・補欠選挙の公認管理委員会は、尹大統領の発言があった翌日の5月10日、キム前議員をまったくゆかりのない慶尚南道昌原市義昌区(チャンウォンシ・ウィチャング)の補欠選挙の公認候補に確定した。 民主党は尹大統領とミョン氏が電話で話したのは2022年5月9日だと発表した。尹大統領の就任前日だ。「大統領当選者」の地位と権限については、大統領職引継ぎに関する法律で礼遇と権限が定められている。「大統領当選者は大統領職引き継ぎのために必要な権限を持つ」となっており、その権限で任期開始前に首相および国務委員候補の指名権限を有する。国務委員指名の権限、任期5年の国政の下絵を描くための大統領職引継ぎ委員会の設置など、現職大統領に準ずる礼遇と一定の権限が与えられる。ただし、当選者はまだ選出職公務員ではない。 しかし、実際に公認が確定したのは、大統領の任期開始初日の5月10日だ。民主党の「ミョン・テギュンゲート真相調査団」団長のソ・ヨンギョ議員は「(公認指示の)行為が影響を及ぼした公認発表が任期中に行われた」と述べた。公認の指示は大統領当選者だった時に行われたが、実際に実行(公認の確定)されたのは、現職の大統領になってからということだ。 公職選挙法は「政党の公認は民主的手続きに従わなければならない」と定めている。このため、政党民主主義を害する公認への介入は、重大な公職選挙法違反で処罰の対象になってきた。 公職選挙法の公訴時効は選挙日基準で6カ月。ところが、公務員の地位を利用して公職選挙法に違反した場合は、公訴時効が10年に増える。憲法裁判所は、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の公職選挙法違反と関連し、「公務員が地位を利用して選挙犯罪を犯した場合、一般人に比べて選挙の公正と自由を大きく阻害し、それによる影響と弊害が大きい。このような犯罪は公権力によって組織的に隠蔽され、短期間に明らかになりにくいこともあり、短期の公訴時効を適用した場合、処罰規定の実効性を確保できない恐れもある」として、「公訴時効10年」の条項に合憲決定を下した。 尹大統領は党員として公認について公認管理委員会に「個人の意見」を明らかにしただけだと主張することもできる。しかし尹大統領は検事時代、朴槿恵氏が大統領時代に公認への介入を承認・共謀したという容疑だけで起訴した。 第20代総選挙を控え、親朴槿恵派の議員らが公認を受けられるよう指示し、親朴(槿恵)リストと公認規則関連の対応資料などを公認管理委員会に伝え、親朴候補の出馬地域区選びなどに関与し、非朴派の排除と親朴派の単数公認などの指示に関与した疑いだ。裁判所は同事件の裁判で、大統領が公認に直接介入せず、公認管理委員会の構成に影響を及ぼしただけでも有罪を言い渡した。 元祖「尹核関(尹大統領の核心関係者)」であるクォン・ソンドン議員(国民の力)は31日、尹大統領の肉声が公開された後、「党の第1号党員である大統領や大統領当選者として自分の政治的な意見を言える」と援護した。 これに対する判断基準になりうる裁判所の判例も、尹大統領が起訴した朴槿恵氏事件から見つけることができる。裁判所は選挙運動企画行為など公職選挙法違反の疑いで起訴したこの事件で、大統領の「単なる意見開陳」と「能動的な意見開陳」を区分した。 裁判所は「大統領も党員であるため、公職選挙法で許す通常の政党活動の一つとして選挙に関する意見を開陳することができる。しかし、非朴派候補の排除と親朴派候補の多数当選という明確な目的意識を持って計画的かつ能動的に実行したため、政党員としてできる単なる意見開陳とは言い難い」と有罪を宣告した。 憲法裁判所は、大統領弾劾が可能になるためには「憲法と法律の重大な違反」という基準を提示している。公認への介入は、憲法と公職選挙法などが規定する政治的中立などの大統領の義務に対する重大な違反に当たる。国会が当時朴槿恵大統領を弾劾訴追した時点では、公認への介入は含まれていなかった。その後、尹錫悦ソウル中央地検長時代に公認への介入疑惑で追加起訴され、2018年11月に懲役2年が確定した。 キム・ナミル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )