【何が】二階氏“世襲”息子に出馬要請の舞台裏「長男か三男か」「世耕氏へのけん制」地元有力者の思惑
■もう一人の後継候補 兄・俊樹氏は弟への協力姿勢を見せる
実は、二階氏の後継候補には、長男・俊樹氏の名前も挙がっていた。俊樹氏は豪快な人柄で、一部支持者からは「上から目線だ」とも言われるなど、物腰の柔らかい伸康氏とは対照的な人物だ。 町村会は俊樹氏に対する出馬要請を見送った。俊樹氏は2016年の御坊市長選に出馬し、現職との保守分裂の選挙戦の末に落選。さらに、46歳の伸康氏よりも10歳以上離れ、来るべき選挙では60歳に近い新人候補になってしまうことが理由だ。 しかし、支援者の一部からは俊樹氏の擁立を求める声も上がっていて、このうち一人は「腰が低いのは伸康氏の長所だが不安も覚える。国会で地元のための予算を確保するには俊樹氏のように強い姿勢で、意見を押し通す人間が必要だ」と明かす。 俊樹氏自身も出馬に意欲を持っていたため、兄弟は犬猿の仲と言われていたが、今月21日に開かれた自民党和歌山県連の会議では、俊樹氏が同席する中、地元の県議らが伸康氏を擁立する方向で意見がまとまったという。 現在、俊樹氏は各県議に対して伸康氏への支援を求めていて、協力する姿勢を見せているという。
■避けられない「世襲」批判も…支援者「息子が国会議員になるのはメリット」
二階氏は、自身が会長を務める二階派の政治資金パーティーをめぐる裏金問題により、東京地検特捜部に派閥の会計責任者が在宅起訴されたほか、秘書も略式起訴された責任をとる形で自身の不出馬を表明した。伸康氏自身も「秘書も連帯してとらなければならない、今もその考えは変わらない。自ら手を挙げるかというのは、私自身も自問自答してきた」と明かす。 伸康氏が立候補した場合、“世襲”の批判は免れない。さらに、二階氏は政治資金の問題で説明責任を果たさぬまま退場した中、その後継が真相を知りうる人物である息子で公設秘書の伸康氏なのであれば、説明責任も“世襲”することになる。 一方で、1983年の初当選以降、故田中角栄氏を師と仰ぎ「政治の原点は故郷にあり」という姿勢を貫いた二階氏の地元での人気は今も絶大だ。 県内の高速道路整備は着実に進み、大阪から紀伊半島各地への車での所要時間は大幅に短縮された。2022年には県内最後の未着工区間の用地取得事業が始まり、前回衆院選の法定ビラに掲げた「高速道路、紀伊半島一周」という公約は、実現の最終段階に入っている。 支援者の一人は、「地元の有権者が要望を上げる際、二階氏の長男・三男のどちらも窓口を担ってきた。すでにできているパイプを今後も持つことができるため、息子が国会議員になることは地元にとってメリットだ」と話し、世襲候補だからこそ支援者が“一枚岩”になっているともいえる。 世襲への批判に対して伸康氏は、「世間全般にご意見があることは当然承知している。今の段階では仮定の話になるので、出馬を決意した際にお話しする」と話すにとどめた。 新たな和歌山2区をめぐっては、楠本文郎氏が共産党の公認で出馬すると表明しているが、果たして一般の有権者がどのような反応を示すのか、世耕氏らの動向を含めた選挙戦への動きが熱を帯びている。