加藤和樹×田代万里生 「みんながお互いに支え合わないと成り立たない」稽古場から見えてきた『カム フロム アウェイ』の魅力
ミュージカルではあまり見たことのない“日常の加藤和樹”が見られるかも?
――稽古場でのお互いの印象を教えてください。 加藤 万里生さんは、共演する度に違う表情を見せてくれるので本当に楽しいんですよ。『マタ・ハリ』の時は、同じ役だったからこそ、こういうアプローチもあるのか! という衝撃があって。 田代 あの時は、同じ役をやってる感じがしなかったよね。それぞれが違う役をやって、「グッジョブ!」って言い合ってた感じ(笑)。 加藤 万里生さんのラドゥーは、演出の(石丸)さち子さんですら思い描いてなかったラドゥーだったと思います(笑)。そのあとの『ジャック~』では、陽気でちょっと人を食ったような役。今回みたいな軽めの万里生さんを見るの、僕は初めてという気がします。 田代 それは和樹君もだよ。今回はみんなそれぞれ等身大の自分を生かせる役を演じてるから、ちょっと当て書きみたいに感じられる時があって。和樹君のボブもそうで、ミュージカルではあまり見たことがない“日常の加藤和樹”が見られてる感じがします。ボブのちょっと、アタフタしてるところとか(笑)。 加藤 舞台では見せないだけで、日常の僕は常にテンパってますからね(笑)。今回の出演者の中で僕は下から2番目なので、そういう気質が特に出てるのかもしれないです。元々末っ子なので、この現場はすごく居心地がいいんですよ。 田代 あ、末っ子なんだ! そういう感じしないよね。お兄ちゃん気質に見える。 加藤 面倒を見たいタイプでもあるんですけど、先輩ばかりの現場に来ると元々の末っ子気質が出てきて、自由に居られる感じがします。 田代 多分この現場は、全員居心地がいいよね(笑)。誰も遠慮をしないから本当に清々しい。 加藤 そうそう、みんな自由だから(笑)。 田代 まず先輩のクミさんとか(吉原)光夫さんが切り出して、(橋本)さとしさんがボケて(笑)。 加藤 ボケてるつもりはないんでしょうけど(笑)、そうですね。台詞を噛んでも「もう1回お願いしまーす!」って遠慮なく止めるから、僕も間違えていいんだって思えます。 田代 だけどさとしさん、メディアの皆さんを入れた公開稽古では急にスイッチが入ってて。 加藤 めっちゃカッコ良かったですよね! 田代 多分皆さん、お客さんが入ったら化ける人たちなんだろうな。 加藤 百戦錬磨の方ばっかりですからね。僕もしっかりついて行かなきゃと思ってます。 ――音楽の印象はいかがですか? 田代 100分間、最初から最後までずーっと音が鳴ってるんです。歌と台詞が常に同時進行してて、前奏でも間奏でも後奏でも誰かが喋ってて、サビの途中で誰かが歌ってる中にも別の人の台詞が入ってきたりするので、100分間ずっとカオス(笑)。 加藤 あははは! 100分間の長~い1曲だと思ってもらったほうがいいかもしれないですね。 田代 そうそう、お客さんが拍手するタイミングも3回しかない演出になってるし。 加藤 拍手が入ると途切れちゃうから、ってことだと思いますが、ドSな演出ですよね(笑)。音楽自体は、どのジャンルとは言えないくらい色々なジャンルが入っていて、色々な国の色々な人種の登場人物が入り混じってるこの物語を、音楽でも表しているのかなと思います。 田代 確かに。でもサウンド的には完全にケルティックで、ケルトの楽器が刻むビートの中で僕らが生きてく感じだから、ずっと統一感はあって。 加藤 ノリが良いですよね。ただ、歌うのは難しい。これだけのメンバーが、ブレスも音量感もニュアンスも揃えるっていうのは大変なことだなと実感してます。その分、ピタッとはまったらとんでもないエネルギー量になるんだろうなと。 田代 ほかの作品だと、テノールの人はこのパート、バリトンの人はこのパートという分かれ方だけど、この作品は一人ひとりパートが違うからそこも難しいよね。それぞれの自己責任(笑)。 加藤 そうなんですよ。僕は万里生さんと同じパートのところが多いんですが、たまに違うところにも行くから頼れない(笑)。さっきまで下の段だったのに、急に上の段に行くの!? とかもありますし。歌稽古が去年の10月末くらいに始まって、ずいぶん早いなと思ったんですが、それくらいやらないといざ稽古になった時に稽古ができない作品なんだと。本稽古も、長いなと最初は思ったんですけど、最近ではひょっとしたら足りないくらいかも?と思ってて。 田代 歌も台詞も動きも、把握するのに時間が掛かる作品なんだよね。開幕1か月前には通し稽古ができるように、しっかり逆算してくれた製作陣に感謝しています。