4番がバント。WBCで悲願Vを果たした米国の誇りと執念
WBCの決勝は予想外の展開になった。初の決勝進出となった米国と2年連続の決勝進出のプエルトリコ。どちらが勝っても悲願の初優勝だったが、ふたを開けてみれば、8-0のワンサイドゲームとなった。 そこには、72歳の名将、リーランド監督を据え、できる限りのメジャーのトップクラスを結集した米国チームの誇りと執念があった。 リーランド監督が言う。 「私は代表チームを監督する機会を得て、選手たちは代表チームでプレーする機会を得た。この勝利はこの国に尽くす全ての人のためのものだ」 先制パンチを浴びせたのはキンズラーだった。30本塁打&30盗塁を過去に2度達成、昨年は28本塁打を記録しているタイガースの二塁手。3回無死一塁からセンターのフェンスをギリギリに超えていく2ラン。メッツで昨季ローテをつかんだばかりのルーゴに襲いかかる。 5回には今度はキンズラーが突破口を開いて、無死一、二塁からイチローの同僚、イエリッチがライト前へタイムリー。そして、この試合の最大のハイライトは、この後に訪れる。 無死一、二塁と続くチャンスに4番のアレナドが送りバントを試みたのである。ドジャースタジアムが異様などよめきに包まれた。 ここまで、2連続三振。準決勝の日本戦から数えると、6打席連続三振で打率は1割台の大不振。ロッキーズの主砲として2年連続ナ・リーグの2冠王を獲得しているメジャーを代表する4番打者が、チームの勝利貢献のために、プライドをかなぐり捨てたのだ。あいにくバントはピッチャー前へと転がり三塁封殺となったが、その意思をマカチャンが受け継ぐ。二死一、三塁となってから、三遊間の深いところを突いた打球は、昨季のゴールデングラブ賞のプエルトリコの名手、リンドアが飛びついてストップしたが、一塁への送球よりも早く、マカチャンがベースを駆け抜けたのである。 打線を勇気づけたのは、大会MVPの選ばれた先発、ストローマンの快投だった。 最速153キロをマークした高速ツーシームをコーナーに決めて6回までノーヒットノーランを続けた。走者を出したのは二回、先頭のベルトランに与えた四球ひとつ。だが、続くモリーナをツーシームでショートへの併殺打に打ち取り、ピンチの芽を摘んでいた。投球の70パーセント以上がツーシーム。おもしろいように内野ゴロのマークをスコアブックに続けさせ、18個のアウト中、12個が内野ゴロだった。 「前回の対戦はボールが高かった。今日はボールを低めに集め、タイミングを外すようにした。後ろの守備にも助けられた。みんなが勝利に貢献したんだ」