成功体験が自信に 主将でチームけん引 和歌山東・此上 センバツ
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)第6日の24日、初出場の和歌山東は浦和学院(埼玉)に0―7で完敗した。だが、19日の倉敷工(岡山)との1回戦では創部12年目にして甲子園で初勝利。チーム発足時、まとまりのなさに途方に暮れたという此上平羅(このうえ・たいら)主将(3年)は仲間たちと共に成長していた。 【熱戦を写真で】九州国際大付vs広陵 自らは2年の春から三塁手のレギュラーだったが、チーム結成時点で他にスタメン経験があったのは2番手投手だった山田健吾選手ぐらい。主将に選ばれたものの、当初はチームのまとめ方が分からなかった。打撃練習の準備でだらだらと歩く選手も。練習試合では個人プレーが目立つなど、「一人一人が違う方向を向いていた」。 米原寿秀監督に「自分はまとめきれません」と弱音を漏らしたこともある。振り返れば、自分たちの代は先輩たちに頼りっぱなしだった。一つ上の代は8~9月の新人戦で優勝し、昨年の春季大会県予選は智弁和歌山に1―2と迫るなど全国の強豪に善戦する力があった。 しかし、自分たちは新人戦で智弁和歌山に0―11の五回コールド負けの屈辱を味わった。「自分は(レギュラーとしての)経験がある。でも他の選手は不安を抱えている。自分がやるしかない」。道具の準備、練習中の声出しなどを率先して行うようになった。 大切にしている言葉がある。「やればできる」。智弁和歌山戦の後、米原監督に「この1カ月で絶対変われる」と告げられ、練習に励んだ。その言葉通り、28日後に県2次予選で智弁和歌山を5―4で破る。「自分たちでも、やればできるんだと自信になった」。成長したチームは昨秋の近畿大会で、直前の夏の甲子園4強経験者が残る京都国際を破るなど、下馬評を覆す快進撃を見せる。準優勝でセンバツの切符をつかみ取った。 出場が決まった際、「小学生の時から憧れていた場所。さらに伝統を作れるよう頑張りたい」と話していた。その言葉通り、初戦では延長十一回に自ら2点適時打を放ち、チームはモットーの「魂の野球」でこの回一挙7点を奪って勝利。「自分たちのペースになったら離さないチーム」。成功体験は、さらなる自信となった。 この日の敗戦では「一球の怖さ、大切さを学んだ」といい、甲子園の土を踏んでの収穫は大きい。 「目標だったベスト8には届かなかった」と満足はしない。「もう一度、この舞台に帰ってきたい」。歴史を作るためではなく、目標を達成するために。主将として、もう一度チームを引き締め、夏に向けて歩み出す。【橋本陵汰】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。