戦闘前「プレイヤー全回復」は自信ゆえ?名作RPG「勝負愛が強すぎるボス」はいかに魅力的だったのか
■わざわざフルメンバーを揃えてくれる優しさ…『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』イブール
11月14日に発売となるHD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』が話題を呼ぶ『ドラクエ』シリーズ。 前述の『FF』シリーズとは双璧を成す名作揃いだが、なかでも1992年に発売された『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(エニックス 現:スクウェア・エニックス)には、思いがけない方法でプレイヤーを有利にしてくれるボスキャラが登場している。 それが、物語の“青年期”に登場する「光の教団」の教祖・イブールだ。 ワニと人を掛け合わせたような見た目のイブールは、“世界平和”を謳う教団を隠れみのに、人々を奴隷として労働させたり、石化した主人公の妻を教団のシンボルとして扱ったりと、非道の限りを尽くしていた。 そんなイブールは、妻を救い出すべく大神殿へと駆け付けた主人公らの前にボスとして立ちはだかる。「かがやくいき」や「イオナズン」、「痛恨の一撃」といった強烈な攻撃技はもちろんのこと、「マホカンタ」による防御や「いてつくはどう」での強化解除と、攻防共に隙のない立ち振る舞いに苦戦したプレイヤーは多いだろう。 まさに物語を代表する悪役だが、実はイブールは戦闘前、意外な方法で主人公側を有利にしてくれる。 彼と激突する大神殿は“馬車”を乗り入れることができないのだが、なんとボス戦に入る際、わざわざ馬車のメンバーを呼び寄せ、万全の態勢で戦いに挑ませてくれるのだ。これまで悪行三昧だった彼が見せるささやかな優しさに、驚いてしまったプレイヤーも少なくはないだろう。
■機械の体に“武士”の魂…『サガ フロンティア』メタルブラック
“勝負愛”を見せるキャラはどこか武人然とした性格をしていることが多いが、1997年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)から発売された『サガ フロンティア』のなかにも、“まさしく武人”といったテイストのキャラクターが登場している。 数々の主人公のストーリーが交差していく本作において、「レッド編」に登場するボスキャラ・メタルブラックは、敵とは思えない正々堂々とした立ち振る舞いでプレイヤーを魅了した。 悪の組織「ブラッククロス」の四天王の一人として君臨する彼は、“メタル”の名が指し示す通り、鋼鉄の体に武士の心を持ったメカである。早い段階で主人公・レッドの前に姿を見せるが、彼は敵でありながら「ブラッククロス」の情報を伝えるなど、レッドと対等な立場で戦うため、中立な立ち振る舞いを見せていた。 その後、激突するたびに改造を受け新たな姿を披露していくメタルブラック。最終的にはレッドの変身後の姿に似た“メタルアルカイザー”として、立ちはだかることとなる。 姿形は変わってしまったが、それでも核の部分にある“武士”としての心は捨てておらず、ほかの四天王らとの連戦で疲弊したレッドを回復させ、全力での勝負を仕掛けてくるのだ。 メタルブラックはレッドことヒーロー・アルカイザーを模倣した数々の新技で攻めてくるうえ、必殺技を改良した凄まじい威力の「ダークフェニックス」を繰り出してくる。 だが、この戦いではレッドも新たな必殺技「真アル・フェニックス」に開眼したりと、互いが全力をぶつけ合う、実に熱い展開が繰り広げられていく。 敵ながらヒーローの良きライバルとして活躍した、作中屈指の魅力的なボスキャラだといえるだろう。 いかがだろうか。作中、プレイヤーの壁として立ちはだかるボスキャラたちだが、ときにはその“勝負愛”の強さでこちらを驚かせてくれる。彼らの好意を無駄にすることなく、全身全霊をぶつけて活路を切り開いていきたいものだ。
創也慎介