震度6以上では「大好きなもの」も凶器に。地震に強い部屋づくりを【防災のプロが語る#3】
国際災害レスキューナースとして活動する辻 直美さん。これまで多くの被災地を見てきた辻さんいわく、震度6以上になると「ものは凶器に変わる」。平時ならとても危険とは思えないようなものによって大きなけがをする、場合によっては命を失うこともあるのが地震の恐ろしさです。辻さんが目の当たりにした被災地の家の中と、地震に強い部屋づくりのポイントを聞きました。 【写真7枚】震度6弱を記録した大阪府北部地震で被災した辻さん宅と、隣人宅の被害の差を写真で見る。同じ間取りと強度のはずが…事前の備えを大切に
落ちてきた本やスニーカーで、亡くなる方もいる
阪神・淡路大震災で亡くなった方の77%が、家屋の倒壊や家具の転倒などを原因とする窒息・圧死だといわれています。さまざまな被災地で家の中に入りレスキュー活動をしてきた辻さんは、物に埋もれて動けずにいる方、またそのまま亡くなってしまった方をたくさん見てきたといいます。 「大きな地震が起きると背の高い家具が倒れてくるのは、想像しやすい光景だと思います。ただそれだけではなく、ひとつひとつは軽くても、大量に落ちてくると凶器になってしまうものがあるんです。 たとえば本。被災地では、大量の本に埋もれて動けなくなり、そのまま亡くなっている方をたくさん見ました。それから洋服、カバンなどもそうです。 コレクションをして、飾り棚にたくさんスニーカーを飾っている家もあるかもしれません。棚を少し揺らしてみて、ものが動くような状態だとしたら、震度6以上の地震ではその棚に飾ってあるものがすべて落ちてくる、もしくは飛んでくると考えたほうがいいです。 ものを飾るな、というわけではないのですが、落ちてこないための対策は必要です」
吊るした照明器具が、他の部屋まで飛んでいく
大きな地震の場合、ものが予想もしないような移動の仕方をすることがあります。腰より高い位置にあるものは、落下するだけでなく、真横に飛ぶような動きをする可能性があると考えたほうがいいそう。 「大きな地震が起きたら、家具や家電も“飛んで”きます。特に照明など吊るして使うものは、勢いよく揺れて吊るしている部分がぶちんと切れ、違う部屋まで飛んでいくこともあるんです」 2018年、震度6弱を記録した大阪府北部地震で被災した辻さん。そのときにも事前の備えでどれだけ差が出るのかを実感したのだそう。 「私の部屋は、キッチンで瓶が4本倒れただけでした。一方、同じ間取りと強度のはずの隣の部屋では、棚から飛び出した食器がほとんど割れてしまい、歩けない状態に。ご主人に助けを求められて駆けつけたのですが、リビングでは背の高いラックが倒れており、奥さんはラックの下に埋もれて足を骨折してしまいました」