20代で世田谷の“2億円豪邸”購入→仕事激減→借金1億を背負い40代で“バイト生活”…俳優・野村宏伸(59)が語る、紆余曲折の芸能人生
病気になった父親と会おうとしなかったワケ
――お父さんとは会っていたのですか? 野村 親父は、おふくろが亡くなる前年に亡くなってるんですよ。おふくろと離婚してから、僕と妹とはほとんど会ってなかったんだけど、親父も再婚していたことがわかって。夫婦で埼玉に住んでたらしいんですけど、その奥さんを亡くして、ちょっとしてからがんになったんです。で、病院から「息子さん、娘さんと会いたがっています」って電話が来たんだけど。
妹に「どうする? 俺はイヤだよ」って聞いたけど、妹も会いに行かず、そのまま亡くなりましたね。 ――会おうとしなかった理由は。 野村 親父にも、結構な額のお金を貸してたんですよ。全部で800万円とかかな。おふくろと離婚した後、僕が売れている頃に「貸してくれ」って何度か来たんですよ。またなんかやって失敗したのかわからないけど、「これで最後にしてくれ」ってお金を渡してから会ってなくて。結局、一銭も返してくれなかったしね。でも、僕が一番イヤだったのは親父に借金があったらどうしようって。
役所から「遺骨、どうします?」と連絡が来て…
――遺産を相続すると、借金まで引き継いでしまいますもんね。 野村 そう。だから妹と話し合って、遺産相続拒否を決めて。なんかもうイヤだったんですよね、親父の生き方が。 その一方でね。「この人がいなかったら、俺はいなかったしな」みたいな。結局、そこに戻るというか。自分も子供がいて、親になるとね。 役所から「遺骨、どうします?」と連絡が来て。親父は自分の兄妹とも仲が良くなかったんですよ。だから、無縁墓とか共同墓地かなと考えたんだけど、なんだか可哀想になってきてね。やっぱ、自分の親父だからね。それで、かみさんと遺骨を引き取って野村家の墓に入れたんです。そこに、おふくろも入ってるんですよ。
いろいろあったけど、無駄遣いだとは思っていない
これがまた、面白い話というか。おふくろの遺骨が、再婚相手の家の都合で、あちらのお墓に入れられなかったんですよ。「どうしよう」と考えてたら、おふくろが「死んだら、野村のお墓に入りたいのよね」と言っていたのを妹が思い出して、「そうなの!?」って。 僕も妹も、一緒に入ってたほうが墓参りもしやすいですからね。お寺のお坊さんに「こういうこと、いいんですか?」って聞いたら、「ああ、全然大丈夫ですよ」だって(笑)。 ――離れた家族が再び集まったといいますか。公私ともに、相当に波乱万丈だったんですね。 野村 お墓に関しては、僕も驚きましたけどね。お金を稼いで、貸して踏み倒されちゃったり、大きな家を建てたり、手放したり、いろいろあったけど、無駄遣いだとは思っていないですよ。人生勉強になったし、そんなこと普通は経験できないじゃないですか。 撮影=石川啓次/文藝春秋
平田 裕介