NASAが火星サンプルリターンミッションの手法研究で7社の企業を選定
NASAとESAは火星の表面で採取したサンプルを地球に持ち帰る「火星サンプルリターン(Mars Sample Return)」計画を共同で計画・実施しています。これまで火星の岩石は隕石として地球に飛来したもの(火星隕石)を調べるか、あるいは火星探査機・火星探査車に搭載された装置を使って現地で採取・分析することしかできませんでした。米欧共同のサンプルリターン計画が成功すれば、火星で直接採取されたサンプルが初めて地球にもたらされることになります。 従来の計画では、火星サンプルリターンは「火星でのサンプル採取」「サンプルの回収と打ち上げ」「サンプルを地球へ輸送」という三段構えのミッションで構成されています。このうち第1段階となる「火星でのサンプル採取」は、2021年2月に火星のジェゼロ・クレーターに着陸したNASAの火星探査車(ローバー)「Perseverance(パーシビアランス)」によって、すでに進められています。 一方、「サンプルの回収と打ち上げ」と「サンプルを地球へ輸送」の段階を担う探査機の製造などはまだ進められていません。従来の計画に従えば、Perseveranceが採取したサンプルの回収と打ち上げはNASAの着陸機「SRL」が担当し、SRLに搭載されている小型ロケット「MAV」を使って火星の周回軌道へ打ち上げられます。この時点で軌道上にはESAの周回機「ERO」が待機していて、火星表面から打ち上げられたMAVから放出されたサンプル入りの球形コンテナをキャッチして回収カプセルに収容し、地球に運ばれます(※)。 ※…SRL: Sample Retrieval Lander(サンプル回収ランダー)、MAV: Mars Ascent Vehicle(火星上昇機)、ERO: Earth Return Orbiter(地球帰還オービター)の略。
ただ、3つの探査機・探査車や1つの小型ロケットなどを前提とした従来の計画は非常に複雑です。NASAの2024年4月15日付のプレスリリースによると、総予算は80億~110億ドルと試算されており、予算上の制約やバランスの取れたポートフォリオを維持する必要性を考慮すれば、採取されたサンプルが地球へ到着するのは2040年になると予想されています。 このことにはNASAのBill Nelson(ビル・ネルソン)長官自身、NASAがこれまでに実施してきたミッションのなかで最も複雑なもののひとつになると前置きした上で「結局のところ、110億ドルという予算は高すぎて、2040年という帰還日は遠すぎます」と述べています。そこでNASAは、コスト、リスク、ミッションの複雑さを軽減した上で、2030年代に火星から地球へとサンプルを持ち帰ることができる手法の提案を募集しました。その提案に対して回答した企業から選ばれたのが、前述の7社というわけです。 NASAは選定した7社やNASA、JPL、APLでの研究が完了した後、すべての内容を評価した上でサンプルリターンの方法を変更または強化する予定だということです。 Source NASA – NASA Exploring Alternative Mars Sample Return Methods NASA – NASA Sets Path to Return Mars Samples, Seeks Innovative Designs
sorae編集部