世界でも戦える?日本のタテ読みマンガ【SENSORS】
■難しさは“キャッチーさ”と“メッセージ性”の両立
タテ読みマンガのブームは韓国が牽引しており、世界中で読まれている作品も韓国発が多いが、ようやく日本発の作品もようやく追いついてきた。山下さんは、ここから日本のヒット作が生まれることを期待する。 「韓国のほうがタテ読みマンガに取り組み始めた時期が早かったため、ノウハウを活かした数々の人気作が生まれています。一方、日本でも2022年頃からタテ読みに対応できるスタジオや会社が増えてきました。2024年は、もっとたくさんの作品が世に出てくるはずです。作品数が増え、多くのクリエーターが関わるようになってきた今、ヒット作が生まれるのではと感じています。日本には、ヨコ読みマンガを作ってきた歴史や伝統技術もあるので、そこが噛み合わさっていくと、自ずと勝てるようになるのではと思います」 前田さんは、さらに作家の才能やメッセージ性も重要と話す。 「韓国発のヒット作は、メッセージ性、作家性が強いと感じます。日本作品が韓国を含めて世界で戦えるかどうかに関しては、日本の作家さんたちの才能やメッセージ性をいかに打ち出せるかにかかっているのではないでしょうか」
これまでメッセージ性の強い作品を手掛けてきた佐渡島さんは、今の時代は設定の面白さとテーマの深さのどちらも大事だと話す。 「これまで僕の作った作品ってなかなか売れなくて。『ドラゴン桜』も『宇宙兄弟』も2年間ぐらい売れなくて大変だったんですよ。"粘っていくと面白かった"という感じなんです。ただ、もう今の時代は、"設定の面白さ"と"作品の持つテーマというか深さ"みたいなもの両方を狙うという感じで作品を作っています。初速が悪かったら、何かが悪かったと思ってやり直そうという考え方です。読者はいきなりメッセージとか、深く考えてみようと思ってなくて。みんな面白いものを知りたいと思っています。昔はマンガを読む人たちって、何かを深く考えたいとか、本を読む延長線上でマンガを読んでいたのに対して、スマホのタテ読みマンガは隙間時間をつぶすために読みだす。読んでいく中で気がつくと深いことを考えていたな、という感じだと思うので、両方をかなえることが重要だと今は思っています。僕は、キャッチーさをつくるのが苦手です。僕にしたらすごくキャッチーかなと思って出すと、まったくキャッチーじゃないということを、今、味わってますね」