<挑戦の春・’21センバツ専大松戸>第1部 軌跡/2 日々の成果、勝利で実感 培った集中力、長丁場制し /千葉
2020年9月27日の県大会準々決勝。千葉学芸との激戦は6―6で延長十六回裏までもつれこんでいた。1死満塁の場面で打順を迎えた専大松戸の9番・石神遥樹選手(2年)に持丸修一監督はこう指示した。「自分の中で確率の高いことをやりなさい」 打席に立つと、まず落ち着いて相手の守備を見渡した。内野手はベースより後方で構えている。得意のバントを決めるのに有利な守備位置だ。「練習どおりにうまく転がせたら……」 三塁ランナーの奥田和尉選手(2年)に視線を送ると、目で合図が返ってきた。「奥田なら生還してくれる」。そう信じ、二球目のボールをバットに当てた。 白球は狙い通りに小さく転がった。4時間25分に及んだ熱戦の幕を引いたのは、バッターとランナーが「あうんの呼吸」で試みたスクイズだった。7―6での勝利。持丸監督は試合後、「あそこまで長くなるとは思わなかった」と振り返った。 ◇ ◇ 「人の集中力はそれほど長くは続かない」という持丸監督の考えから、チームの全体練習は特段、長くはない。平日は2~3時間、休日は昼の休憩を挟んで4~5時間ほどだ。 時間が短いぶん、厳しい練習に集中して打ち込む。部員たちの印象に残っているのは夏の炎天下のノックだ。矢継ぎ早に飛んでくる打球を無我夢中で追う。グラウンドに置いたボトルの水は、湯のように温度が上がった。「あの水の味が忘れられない」と話す部員もいる。 全体練習の後は自主練習。最後に部員たちは集まってその日の反省をする。一日一日の地道な練習の積み重ねが、選手たちを鍛え上げてきた。 ◇ ◇ 千葉学芸との準々決勝。1―1からタイブレークに突入した十三回は、先攻の千葉学芸が3点を奪うと、後攻の専大松戸も3点を取った。十四回は1点、十五回も1点と千葉学芸が点を挙げるたびに同点に追いついた。 緊迫した展開が続く。ベンチでは持丸監督が選手たちを励ましていた。「こういう経験は初めてだけど、我慢しよう」「練習でやってきたことをすればいい」 イニングが変わるごとに気持ちを切り替えた。「いつもの練習のように集中力が切れることはなかった」と、選手たちは口をそろえる。勝利をつかんだサヨナラスクイズも、長丁場の試合の中で「いつも通り」を徹底した成果だった。それは部員たちが、日々の練習に大きな自信をつかんだ勝利だった。=つづく