「ケガの影響」と思われているのが悔しい…日本代表・三笘薫が胸中を明かす「自分が不甲斐ない」苦悩
W杯カタール大会の″三笘の1ミリ″から1年 イングランド・プレミアリーグで奮闘する日本のエースを直撃すると――
三笘薫(26)の転機は、’22年W杯カタール大会だった。1次リーグ初戦のドイツ戦で後半12分から途中交代でピッチに入り、2-1の逆転勝利に貢献した。そして、決勝トーナメント進出の懸かった大一番のスペイン戦――。1-1で迎えた後半6分、ゴールラインぎりぎりでボールに追いついて切り返し、田中碧(25)の決勝点をアシストした。 三笘薫 真面目な男が旧知のカメラマンに見せた、笑顔のサムズアップ【写真】 「三笘の1ミリ」として日本国内で大きな話題となったこのアシストは後日、サッカーの母国イングランドのメディアも「ミトマが魔法をかけた」(『ウィー・アー・ブライトン』)と伝えた。三笘はこう語っている。 「たくさんメッセージをいただき、いろんな人が感動してくれたようです。なかなかできる経験ではないので嬉しいです。短い出場時間の中で、自分の持ち味を出せるところは出せたかなと。もっと試合に出れば、もっと色々掴めたかなという思いもあります。(三笘の1ミリと言われているが)あそこで諦める人は、あまりいないかなと思う(笑)。自分はそんなに気にしていないですね」 W杯から世界最高峰のプレミアリーグに戻った三笘は快進撃を見せる。 リーグ再開後の公式戦16試合で8ゴール、5アシストの大暴れ。キックフェイントから鮮やかな決勝弾を叩き込んだFA杯のリバプール戦での得点は、大会ベスト5ゴールに選ばれた。ゴールの量産態勢に入ったこの時期、三笘はイングランドで充実感を漂わせていた。 「毎試合決める意識でやっています。周りからそういう目で見られているところもあるかと思いますし、逆にそういうプレッシャーもうまく楽しめているかな」 W杯前、日本代表での立ち位置は、あくまでもベンチ要員だった。試合終盤の「切り札」「ジョーカー」として重要な役割を担っていたものの、スタメンの座は奪えなかった。 ところがW杯後の新生日本代表で、三笘の立ち位置は中心選手へと様変わりした。26歳のアタッカーはプレミアリーグでも大活躍。日本から向けられる期待の大きさをヒシヒシと感じるようになった。 「注目してもらっているのは嬉しいですけど、日本代表でそれだけのプレーをしないといけない。期待を裏切らないようにしたいなと。スタジアムまで、代表戦を見に来てくれる人も増えていると思います。プレミアリーグでプレーしているので『(三笘は)どれくらいできるのか?』という見られ方もするはず。それ相応のプレーをしないといけない」 ブライトンでもエースに成長。これまで以上に責任を重く感じるようになった。最たる例は、昨シーズンの終盤戦だ。クラブ史上初の欧州リーグ出場権の獲得に大きく貢献したが、三笘個人は連戦の疲労がたたって失速。ゴール、アシストから遠ざかった。喜びを爆発させたのは欧州リーグ出場決定直後だけで、シーズン最終節は反省の言葉を繰り返した。 「シーズン終盤は、メンタルの余裕がなくなったのか、少し焦りがあったのか。シンプルに自分の実力が出たと感じています。チームにケガ人が増え、自分の負担が大きくなったところで、うまくできなくなった。結果が出ている時は楽しいですけど、出ない時は難しいです。成長もできましたけど、課題もすごく出たシーズンだった」 こうして迎えた今シーズン、三笘の重責はさらに増した。ブライトンではMFアレクシス・マクアリステル(現リバプール)とMFモイセス・カイセド(現チェルシー)の主力2人が退団し、さらに攻撃陣に故障者が続出する緊急事態に見舞われたのだ。三笘自身も昨年11月に右太もも裏を痛めた。そんな苦しい状況で、サムライ戦士が口にするようになったのは、エースとしての責任だった。 「チームを勝利に導くゴールを決めたい」 常日頃からそう語る三笘にとって、納得のいかない試合が増えた。相手に退場者が出ながら、2-3で敗れたチェルシー戦(12月3日)後は、強い自責の念に駆られていた。 「僕が仕掛けて、相手陣内の深いところまで行き、質の高いクロスをあげれば終わりだった。それができなかったのが不甲斐ない。(ケガの影響は)まったく問題ないです。ピッチで自分の力を出し切れていない。『ケガの影響があるから仕方ない』と思われているのが悔しいです」 日本代表でも、もどかしさを感じている。9月シリーズのドイツ戦こそ先発して4-1の大勝に貢献したが、10月シリーズは体調不良で辞退、11月シリーズは右太もも裏のケガで途中離脱。ブライトンでは12月21日のクリスタルパレス戦で左足首を痛めた。ロベルト・デゼルビ監督は「4~6週間の離脱となる」と説明。アジア杯出場に黄信号が灯った。 しかし、三笘はアジア杯を戦う日本代表に招集された。デゼルビ監督の説明から計算すれば、1月28日に始まる決勝トーナメントからピッチに立てる可能性がある。森保一監督は、難易度が上がる決勝トーナメントを睨んで、三笘の招集に踏み切ったのだろう。 三笘にとって、今回のアジア杯は日本代表の中心選手となって初めて挑む主要国際大会である。ケガを抱えながら開幕を迎え、復帰後もコンディションへの不安はある。しかしピッチに立てば――ブライトンの時と同じように、主力として強い覚悟と決意を持って臨むはずだ。 『FRIDAY』2月2・9日合併号より 取材・文:田嶋コウスケ
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