「病気も定年も、人生を見直す絶好の機会」余命10年・岸博幸、人生の締め切りの考え方
2023年1月、多発性骨髄腫という血液のがんに罹患していることを知った岸博幸氏。余命10年を告げられた岸氏が、闘病の記録や今後の生き方、日本の未来への提案をつづった著書『余命10年。多発性骨髄腫になって、やめたこと・始めたこと。』の一部を再編集してお届けする。第3回。 【写真】『余命10年 多発性骨髄腫になって、やめたこと・始めたこと。』
定年後、少なくとも20年は生きる
病気が判明した時、僕は60歳だった。会社勤めの身であれば、そろそろリタイアの年齢。 法律的には、企業に65歳までの雇用確保が義務づけられ、70歳までの就業機会の確保も努力義務とされているから、実際の定年はまだ先かもしれない。 とはいえ、多くの人が60歳前後で、定年後の人生に思いを馳せることだろう。 その時に立ちはだかるのが、老後のお金の不安である。 日本人の平均寿命は驚くほど延びていて、男性は81歳、女性は87歳(2022年厚労省調べ)。一般的には、定年後少なくとも20年、人によっては30年も生きることになる。 となれば、定年後の生活はどうやって支えていけばいいのか、年金や貯蓄で足りるのかなど、将来が不安になるのは当然のことだろう。 だけど、定年というのは人生のデザインを大きく変えるチャンスでもあるのだから、定年後の人生をいかにハッピーに過ごすかという観点を持つことも忘れないでほしい。 これまでの人生でやりたかったけれどできなかったこと、挑戦したかったこと、興味があること、それを全部やるつもりになってもいいのではないだろうか。 僕が経済的に恵まれているから、そんなことを言っているわけではない。 病気になって以降、体調を考えて仕事の量は減らしているし、またお金よりもやり甲斐重視で仕事をしているので、収入は大きく減った。治療費は正直すごくかかるし、子供たちはまだ中学生と小学生だから、しばらくは教育費もかかる。 でも僕は、家族のためには最低限必要なお金さえ稼げればOKだと考えているし、財産を残す必要もないと考えているので、自分のハッピーを優先するつもりだ。