<甲子園交流試合・2020センバツ32校>「これぞ中京大中京」 接戦制し無敗で夏終える /愛知
甲子園でも無敗神話――。2020年甲子園高校野球交流試合は12日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場での第1試合に中京大中京が登場。智弁学園(奈良)に4―3で延長十回サヨナラ勝ちを収めた。接戦を制する試合巧者ぶりにOBからは「これぞ中京野球」と喝采が上がった。これでチームは公式戦無敗のまま夏を終えた。【黒尾透】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 3―3で迎えた延長十回裏タイブレーク(無死一、二塁から攻撃)、中京大中京は無死満塁と攻め、打席には西村友哉(3年)。直球を打ち損ねふらふらっと二塁手やや後方に上がる小フライとなった。塁審がインフィールドフライを宣言。「万事休す。天を仰ぎました」とスタンドで観戦した父英樹さん(48)。だが、直後に歓声が上がった。相手二塁手が落球、それを見て三塁から前田識人(3年)がホームに駆け込み、勝負が決まった。 中京大中京は序盤に流れをつかんだ。一回、1番の西村が初球をたたいて中越え二塁打。これでチームに勢いがついた。吉田周平(3年)、南谷雅貴(3年)の連続適時打であっという間に3点先取した。 だが、相手の2年生投手、西村王雅も尻上がりに調子を上げ、なかなか的を絞れない。逆に四回表はエースの高橋宏斗(3年)が3四死球を与え追いつかれた。高橋は六回からは毎回走者を抱え、六回と八回は得点圏に走者を置くピンチを迎えたが、これをしのいだ。八回2死二塁で151キロの外角直球で見逃し三振を奪い、九回は2死一塁で153キロ、渾身(こんしん)の直球を外角に決め、再び見逃し三振に打ち取った。「甲子園で155キロ」の目標は届かなかったが、強豪相手に最高のピッチングを披露した。 高橋の母尚美さん(52)はアルプス席で「絶叫していました」。負けを知らないチームだが、今回のようにヒヤヒヤする試合も少なくなかったという。尚美さんは「1年の時から切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲間たちと最高の舞台を経験できた」と息子の成長を喜ぶ。県独自大会からあえて3年生だけで編成した高橋源一郎監督に感謝する。 甲子園で春4回、夏7回の優勝を誇る古豪ながら、関係者にとっても今回の勝利は特別だ。名古屋市でテレビ観戦した野球部OB会長の松波舒比古(のぶひこ)さん(67)は「十回は無安打で決勝点なんて、うちらしい勝ち方」と話す。 松波さん自身も50年前の第42回センバツ大会に出場。今チームは明治神宮大会で優勝しただけに、センバツは「大いに期待していた」という。特に19年に県内のライバル校、東邦が春5回目の優勝を果たし、「春も優勝回数で追いつきたい」と注目していたが、春と夏の大会が中止に。悔しさを乗り越えての勝利に、松波さんは「OBとして誇りに思う」と、伝統を受け継ぐ後輩たちをたたえた。 ◇無敗守った千羽鶴 ○…中京大中京の応援席で、青い千羽鶴が試合を見守った。三つの白線が入ったユニホームのソックスを模した=写真。チームの連戦連勝のお守りとなっているが、本番では新型コロナウイルス感染防止から、スタンドから選手たちを見守った。 毎年父母会で製作するが、今年はセンバツも中止になり、製作するかどうか悩んだという。だが、子供たちに続き保護者も一つになろうと、全員参加で6月に完成した。今チームの目標「ワンチーム」の象徴にもなっているという。 ……………………………………………………………………………………………………… ▽第1試合 智弁学園 0003000000=3 3000000001=4 中京大中京 (延長十回、十回からタイブレーク)