2025年の通信業界を占う「楽天モバイル」の動向、大躍進の勢いは続くか真価が問われる1年に
分断・多極化する世界で、新しい視界を開くことができるか。日本が向かうべき道とは――。『週刊東洋経済』2024年12月28日・2025年1月4日合併特大号の第1特集は「2025年大予測」だ。株式・マネーから日本の政治経済、世界情勢、産業・企業動向、そしてスポーツ・エンタメまで。2025年の注目テーマを徹底解説する。 【図解】急激に伸び始めた楽天モバイルのMNO契約回線数 もう一段の飛躍を遂げられるか、それとも失速してしまうのか──。2025年の通信業界は、足元で急成長する楽天モバイルの動向がポイントになる。
楽天グループにとって、2024年は大躍進の年となった。9月末時点で自社の回線で提供するモバイルの契約数(MVNE、BCP向けを除く)は721万となり、前年末(590万)から約130万増えた。2024年7~9月期はモバイル事業の赤字幅縮小などにより、四半期ベースで約4年ぶりに営業黒字復帰を果たした。 2020年春に携帯キャリア事業を本格開始した楽天は、2022年5月に当時の売りだった「月額0円」の料金体系廃止を発表。契約数は一時減少したが、同年末に底を打つと、それ以降は右肩上がりが続く。
■法人向けが牽引役 契約急増の牽引役とみられるのが、法人向けだ。2023年1月に法人向け事業を本格開始し、5.7万に上る楽天市場への出店店舗などに訴求を進めた。楽天は契約数の内訳などは明らかにしていないが、業界関係者の間では、「新規獲得は、法人向けが個人向けを上回る状況が続く」との見方が多い。 もっとも、2024年は個人向けにも傾注し、祖業の楽天市場を泥くさい営業で成功させた会社の底力を示した。子供や学生、シニアと年齢層に応じたさまざまなポイント還元プログラムなどを導入。楽天モバイルを勧誘する広告が印刷された名刺を社員が配るなりふり構わない営業が目立ち、三木谷浩史会長兼社長自らもトップセールスに余念がなかった。
2024年1~9月に競合からの乗り換えで獲得したB2Cの純増数は41.7万に上り、楽天の奮闘ぶりには競合他社からも驚きの声が上がる。 ■近づくモバイル黒字化 では、モバイル事業の赤字はいつ解消されるのか。 楽天は同事業について、2024年にEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)ベースで「単月黒字化」の達成を目標としていた。キャリアの通信利用収入は、基本的に「契約回線数×ARPU(1ユーザー当たりの平均売上高)」で決まる。損益分岐点を超えるには、800万~1000万回線と、ARPUで2500~3000円の双方の実現が必要だと見込んでいた。