ジャック・マーがアリババ社員「激励メモ」送付の背景にある中国政府の「ヤバすぎる実情」
ジャックマーの「激励」
4月中旬、中国の“アリババ・グループ”の共同創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は従業員にメモを送ったと報道された。報道されたメモの主な目的は、現在の経営陣の事業再編や従業員の取り組みを称賛し、勇気づけることだったようだ。 【写真】習近平の「ぜいたく嫌い」と「EV大失速」の深刻すぎる現実 マー氏は、「アリババは過去に多くの間違いを犯した」と指摘した。その上で、「昨日の問題を迅速に認めて修正する勇気を持つとともに、未来に向けた改革を実行する必要がある」と記した。 同氏は、あくまでも未来=長期の視点で成長戦略の強化にまい進するよう、組織全体を激励したと解釈できる。 現在、中国政府は、アリババの経営意思決定を拒否する株式(黄金株)を保有しているようだ。事実上、アリババの事業運営は政府の意向次第との見方もある。 今年1~3月期の中国経済は、主に固定資産など投資積み増しで前年同期比5.3%の成長(予想4.8%増)を遂げた。
強まる政府の圧力
一方、不動産市況の低迷は鮮明で個人消費も鈍い。マー氏は経済政策のリスク上昇に警戒を強めるよう、メモを通してアリババの組織全体に呼びかけたのだろう。 ここ半年程度の間で少なくとも2回、マー氏はアリババの従業員を鼓舞する内容のメモを社内システムに投稿した。 それは、中国政府によるアリババへの圧力が強まった後のことだった。メモの内容と政策を合わせて考えると、マー氏は、イノベーションの芽を摘み取るような政策運営スタンスが強まると懸念を強めているようだ。 昨年の10~12月期、マー氏はアリババ株を追加で取得した。2020年以降の規制強化で、アリババ株は下落した。 株価に割安感が出たことは、マー氏の投資意欲を誘ったのだろう。それに加えて、マー氏自身がアリババに関与する意思を失っていないことを示し、従業員を鼓舞する狙いもあったとみられる。
経営者復帰期待で株価反発
2023年11月半ば、中国政府の指示によって、アリババのクラウド事業の分離・上場計画は中止された。表向きは、米国の半導体関連の対中規制強化で、アリババが十分なチップを調達することが難しくなったとの説明だった。 発表後、アリババの株価は下落した。半導体規制の影響もさることながら、中国政府は資金調達などに関してアリババへの圧力を追加的に強めたとの危惧も増えた。 そして11月下旬、マー氏は、アリババ全体に変革を促すメモを投稿した。主要投資家はマー氏がアリババへの関与を強め、再度、同社の成長が加速する展開を期待したののである。 これを受けて一時、株価も上昇した。そうした動きを促進することが中国経済の回復に必要なのだが、実際の政策方針は違っている。 2024年の年初以降、中国政府は本土株式市場での売り圧力を抑えるためにIPO(新規株式公開)への規制を強化した。1月、マー氏がアリババ株を追加取得したとの報道が出ると、同氏の経営復帰観測は高まり株価は反発した。