ネーションズリーグ、ファイナルラウンドはパリ五輪への試金石 古賀紗理那らの激動の日々
取材エリアで、セッターの岩崎こよみは最後まで取材対応をしていた。 35歳で育児をしながらのプレーで、日本スポーツ特有の報道形式からは「ママ」という属性で語られる。それは彼女のアイデンティティのひとつだろう。だが、2009年に代表に初めて選ばれ、アキレス腱断裂から復活し、イタリアで武者修行し、Vリーグを代表する選手のひとりとなり、長くセッターとして生きてきた。若い選手たちを鼓舞する姿は、誰よりも「プレーヤー」の属性と言えるだろう。 6月17日、日本は東京五輪で金メダルに輝いたアメリカに挑んでいる。 「5位浮上の可能性があり、パリ五輪の組み合わせで第2ポッドに入れるだけに、勝利を目指す」 チームは明確な目標を掲げてこの試合に挑んでいた。五輪出場は確定。次は五輪をどう戦うか、に切り替わっていたわけだ。だが......。結果から言えば、ストレート負けで力の差を見せつけられている。 サーブで崩したかったが、むしろ相手のパワフルなサーブに綻びが出た。ブロッカーとリベロが連係した守りに阻まれ、スパイクも決まらなかった。そして、じりじりと突き放された。 「今日はずっとチグハグでした」 キャプテンである古賀は、そうはっきりとメッセージを出すことで、チームメイトたちを啓発するようでもあった。勝つために妥協はしない。その姿勢が、エースの存在理由だろう。1セット目、古賀は精度の高いサーブで相手を崩し、立て続けにブレイク。一時は逆転に成功した戦いはひと筋の光明だった。彼女のような人材がいることが、日本の生命線だ。 「選手たちが、昨年五輪予選でトルコ、ブラジルに敗れた悔しさを半年間、継続してくれました」 眞鍋監督は会見で言った。やはり、このチームは否応なく五輪を分岐点にして存在している。その重力とどう向き合い、味方にできるか。 6月20日、日本はネーションズリーグ、ファイナルラウンドの準々決勝で中国と戦う。これも7月のパリ五輪への試金石になるはずだ。
小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki