旧文通費改革 もう頬かむりは許されぬ 政論
「政治とカネ」問題が焦点となっている今国会で、政治資金規正法改正と並ぶ注目のテーマは調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の改革である。 【アンケート結果】首相に最も取り組んでほしい政策は? 国会議員に月額100万円が支給される旧文通費を巡っては、支給を日割りとする改正法が令和4年4月に成立したものの、使途の公開、使い残した分の国庫返納といった制度改正は実現のめどが立っていない。 問題として浮上してから約2年半にわたって議論が先送りされてきた背景にあるのは、自民党内の慎重論の根強さだ。自民は昨年2月、旧文通費改革を訴える日本維新の会に対し、5年度予算案衆院通過後に議論を再開すると伝えた。だが、以降も実質的に黙殺し続け、現在に至るまでうやむやな状態が続いてきた。 規正法改正の機運が高まるきっかけとなったのは自民派閥政治資金パーティー収入不記載事件だが、旧文通費も「政治とカネ」問題にほかならない。財源が税金であるという点を考慮すれば、より深刻な案件だとさえいえる。 不記載事件に伴う逆風を背景に、最近は自民も旧文通費改革に前向きな姿勢を示し始めた。岸田文雄首相(自民総裁)は他党との見直し議論再開を党に指示し、浜田靖一国対委員長は衆参両院議長の下に協議体を設置する考えを示す。 ただ、その詳細や具体的な協議日程などは一切固まっておらず、自民が再び消極姿勢になる可能性は否定できない。維新の遠藤敬国対委員長は21日、これまでの自民の対応を念頭に「疑心暗鬼であることは間違いない」と記者団に語った。 自民が公党間の約束を反故にできたのはなぜか。他の「政治とカネ」問題に比べ、旧文通費問題への国民の関心が低いという事情も一因であると思う。無視したところで、政権運営や党勢維持にさほどの影響はあるまい、と自民はたかをくくってきたのではないか。 議員活動に必要な経費なら堂々と使えばいい。ただし、使途を明らかにする程度の改革は当然だ。われわれ主権者は、既得権を守ろうとする自民の姿勢に厳しい視線を注がなければならない。(松本学)