電気・ガス料金軽減策が復活 物価上昇でやめられず、消費マインド改善は未知数
岸田文雄首相は21日、5月使用分を最後に終了した電気・ガス料金の軽減策を8月使用分から3カ月間限定で復活させると表明した。対策の終了と歴史的な円安の長期化で、モノの価格上昇が再び加速し始めており、実質賃金や消費の回復に水を差す懸念があるからだ。ただ、経済対策としての効果は限定的で政府が掲げる賃金と物価の好循環の道筋はなお見えていない。 ■止まらない円安が追い打ち 「物価高に直撃されている地方経済や低所得者世帯の現状に思いを致し、最も即効性のあるエネルギー補助を講じることにした」。岸田首相は21日の記者会見で、補助金復活の狙いを語った。 政府は令和5年から1キロワット時当たり最大7円を補助していた電気・ガス料金の補助金を今年6月使用分から廃止。それを2カ月間、間を明けて8月分から復活させる。 背景にはインフレ圧力の高まりがある。エネルギー価格の上昇などの影響で2%を上回る消費者物価の上昇が続く中、止まらない円安が物価上昇に追い打ちをかけ、家計の負担が重くなる公算が大きくなっている。 ■消費マインド改善は未知数 連合の集計では6年春闘の平均賃上げ率は5・08%と大幅な賃上げが実現した。だが、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は今年4月まで25か月連続のマイナス。個人消費も1~3月期に前期比0・7%減と、4四半期連続の減少になっており、さえない。 コストプッシュ型の物価上昇が続けば、消費マインドはさらに冷え込む懸念がある。政府は補助金復活でこの流れに歯止めをかけたい考えだ。年末までの消費者物価の押し下げ効果を月平均0・5ポイント以上とすることを目指し、補助額などを検討する。第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは「物価を押し下げる効果はそれなりにあるだろうが、停滞気味の消費マインド改善につながるかは未知数だ」と指摘する。 もっとも、電気・ガスへの補助金を巡っては、岸田首相も「脱炭素の流れに逆行する。いつまでも続けるものではない」と自認する。だが、それでもなお、制度をずるずると続けてやめられないことが、日本経済の足腰の弱さを示している。(万福博之)