牛の快適さを重視 夏はシャワー、牛舎ではジャズ 前橋市・須藤牧場
前橋市の須藤牧場は、牧場をホテルに見立て、牛にも人にも快適な環境づくりを実践する。乳牛の状態に合わせた群分けや、夏場のシャワー設置などで牛のストレスを軽減。従業員は情報通信技術(ICT)の活用で情報共有を円滑にし、休みを取っても互いにカバーし合える体制にしている。20、30代の若手の定着にもつなげ、親族以外の第三者から後継者候補が育っている。 【表で見る】須藤牧場の『こだわりポイント』 同牧場のフリーバーンの牛舎では、ジャズが流れる。「牛も人もリラックスできるように」(須藤晃代表)との考えからだ。 経産牛は、受胎の有無や健康状態に合わせて五つの部屋に分けて管理。発情中の牛や、けがなど異常のある牛は個室にし、牛同士の接触による事故リスクなどを軽減する。牛の健康状態などを記録できるシステム「ファームノート」で情報共有することで、誰かが休んでも仕事を回せる体制にしている。 牛の腸内環境を整えるため、乳酸菌を牛の餌に混ぜ込むことで、ふん尿の臭いを軽減する。その戻し堆肥を牛床に使い、臭いによる牛や人へのストレスも減らす。夏場は40度近くに達する日もあることから、対策として牛の水浴び用のシャワーを設置。牛が自由に移動できる牛舎間のスペースの上部にチューブ状のシャワーを設置し、夏場の日中、かけ流しの状態にする。井戸水を使い、経費を抑える。 農場長を務め、将来的に同牧場を第三者継承する予定の熊川啓太さん(33)は「常に人間に例えて、牛が過ごしやすい環境にするようスタッフと話している」と話す。 こうした工夫は、「冷たいシャワーと大型の扇風機のおかげで心地よく過ごせました」「爪の長さが気になった頃に定期的に手入れしてくれてうれしいです」など、牛の“口コミ”としてホームぺージに掲載。従業員も、ホテルマンに扮(ふん)した服装で牧場での仕事を紹介する。ホームぺージで発信することで、アニマルウェルフェア(快適性に配慮した家畜の飼養管理=AW)や、職場の雰囲気の対外的なアピールにもつなげている。 十数年前から地元の耕種農家と連携し粗飼料を生産。麦、青刈りトウモロコシ、稲発酵粗飼料(WCS)を地場産で確保し、2023年で粗飼料の地場産率は8割に上る。 須藤代表は「AWや地域内循環に取り組むことで、次の世代もやりたいと思える酪農の形にしていきたい」と意欲を示す。(斯波希)
日本農業新聞