YOSHIKI、DIR EN GREY×PIERROT……超高額VIP席の価値とは? JUJU、HYDE、 LUNA SEAらも特別な体験を提供
海外ではスタンダードになりつつあるバリエーション豊かな券種を導入する動きが、近年日本国内のライブ市場においても広がっている。特に海外アーティストの来日公演では、ステージに近い席を確保できるだけでなく、物販の優先購入や特設ラウンジ、特別なグッズといった特典付きの高額なVIPチケットが一般化しており、今年に入ってもテイラー・スウィフト、ブルーノ・マーズ、RED HOT CHILI PEPPERSといったアーティストがこの“VIPチケット”を導入している。 【写真】インタビューに応じるYOSHIKI また、洋楽を軸とする音楽フェス、たとえば『ULTRA JAPAN』や『SUMMER SONIC』、『SONICMANIA』などでもVIP/プラチナチケットが設定されており、参加者に快適でプレミアムな体験を提供している。邦楽アーティストのライブ市場もこの流れに追随し、従来の一律的なチケット料金体系から多様な価格帯でファンに選択肢を提供する形態に変化してきている。VIPチケットや複数の席種や特典に分かれたチケット価格が登場し、直近ではYOSHIKIやJUJU、LUNA SEA、HYDE、DIR EN GREY、PIERROTといったアーティストなどが高額席チケットを導入している。キャリアを重ね、熱心なファンベースを持つアーティストが高額チケットを導入することは、日本国内で主流となってきた一律のチケット代金設定に対して、今後も大きな変革を与える可能性がありそうだ。 まず、大きな話題を呼んだのがYOSHIKIが開催した“VIP価格 1席30万円”のディナーショー『EVENING / BREAKFAST with YOSHIKI 2024 in TOKYO JAPAN』である。今年で10周年を迎えたYOSHIKIのディナーショーは、毎年チケット発売とともにソールドアウトとなるプレミアムイベント。このディナーショーでしか味わえない演奏とトーク、そしてYOSHIKIプロデュースの食事が振る舞われるなど、ファン垂涎の内容なだけに、今年もプレミアムチケットとなることは必至であった。そこで、今年から設定されたのが30万円の「VIP Premium パッケージ」だ。ステージ前方のテーブルが確約され、なんとYOSHIKI本人との記念写真撮影までついたこのパッケージ。通常のライブとは一線を画し、特別な体験を提供してきたYOSHIKIのディナーショーだけあって、高額であっても多くのファンに支持されている。 同じく話題となったのが、DIR EN GREYとPIERROTのジョイントライブである。海外でも高い評価を得ているDIR EN GREYと、解散後再始動したとはいえライブの回数も限定的なPIERROTのプレミアムなライブということもあり、このライブに懸けるファンの想いもひとしおである。そんなファンの熱い想いをしっかり受け止めるべく、今回のライブでは通常チケットの他にVIP席が設けられ、前方ブロックでの観覧や限定グッズが提供される。このVIP席の中にもSSとSの区別があり、通常チケットにおいてもSS、S、A、B席と区分があるため、車椅子の席種も含めると全体では9段階のチケット設定となっている。基本的にはステージがよく見える席から順に券種が階段形式に金額設定されていることも明朗で公平であるといえる。VIPチケットのみに限らず通常チケットにおいても細分化された券種の選択肢が用意されていることは実に合理的であり、ファンにとっても喜ばしいことだろう。 シンガーソングライター・JUJUが今年2月に開催した東京ドームでのライブ『スナックJUJU 東京ドーム店 ~ママがJUJU20周年を盛大にお祝い!! 一夜限りの大人の歌謡祭~』もまた、複数の券種を用意することでファンに特別な体験を提供したライブイベントのひとつだ。スナックの雰囲気を再現した会場で、JUJUはトークとライブパフォーマンスを織り交ぜ、観客との親密な交流を楽しむのが『スナックJUJU』の醍醐味。一般席にあたる「あなたの指定席」に加えて、東京ドームのライブでは珍しいテーブル席での観覧やドリンクサービス、特製グッズなどが用意された「スナックVIPアリーナテーブル席」なども設けられており、東京ドームを大きなスナックに見立てるような演出の一部にもなっている。 また、HYDEもVIPチケットを導入しているアーティストの一人である。HYDEのライブで展開されているVVIPチケットとVIPチケットは、ほかのアーティストが提供するような特別席の設定や特別ゲート、特製グッズのプレゼントなどといった特典だけでなく、NFT(非代替性トークン)が特典のひとつとなっている。公演日ごとに図柄の異なるHYDE本人の画像を使用した撮り下ろしNFTと、公演日付入りのライブ参加記念NFTがプレゼントされるのだ。NFTの性質上、自分だけが所有する特別なデジタルコンテンツであると証明できることもあり、非常にプレミアム感のある特典となっている。これまで音楽シーンの最先端を走り、新たな取り組みを続けてきたHYDEらしい先進的な取り組みと言えそうだ。 そして、LUNA SEAも日本のロックシーンを長年にわたって牽引してきたバンドであり、高額チケットを導入するアーティストである。2025年2月に予定されている東京ドームでのライブにあたり、バリエーション豊かな券種を用意しているのだ。その特徴は券種ごとのネーミング。VIP席に相当する最上位チケットを「SLAVE VIPシート」とし、もう一段下のグレードを「SLAVEシート」としている。SLAVEとはLUNA SEAのファンの呼称であり、彼らのファンクラブの名称でもある。いわばファンとLUNA SEAを繋ぐ合言葉がこの“SLAVE”という言葉なのだ。そんな大切な言葉を冠したアップグレードシートを用意し、特別な体験を演出することは、バンドからファンへの感謝の気持ちが込められたプレゼントであるように感じられる。