【ミャンマー】国勢調査開始まで1カ月、選挙断行か
ミャンマー軍事政権が、約1カ月後に始まる国勢調査に向けたカウントダウンに入った。最大都市ヤンゴンなどでは、10月1日までに調査が開始されるという看板が出現。来年に実施を予定する総選挙に向けて有権者情報を集めるとしている。国軍の政治介入を認めない武装闘争が続く中で選挙準備に突入すれば、爆弾テロなど過激な抵抗が増える恐れがある。 国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーは1日付で、「国勢調査まであと29日」というバナーを掲載した。実際の調査期間は10月1日から15日までとされる。 同紙は8月31日付のオピニオン欄で、全国約1,300万世帯の約5,600万人を対象とする調査になるとして、国民に参加を呼びかけた。調査結果の第1報は今年12月に発表し、首都ネピドーと14地域・州の詳細は来年に公表することになるという。 ヤンゴンの目抜き通り沿いには、調査が「全ての国民を対象とする」とする看板が掲げられた。ヤンゴン市民からは、「誰も進んで協力したくはない」(20代女性)という声もあれば、「政情不安が続いていることが問題で、変化につながるのならば協力する」(50代男性)との意見も出ている。 軍政トップのミンアウンフライン総司令官は8月30日、訪問先の中部バゴーにおける演説で、「選挙で選ばれる次期政権に国家の責任を引き継ぐ」と従来の主張を繰り返した。同氏は2021年2月1日のクーデターとともに発出された非常事態宣言で実権を掌握。憲法の規定上、同宣言は最長2年とされているが、情勢不安を理由に選挙の先延ばしを繰り返してきた。 国軍主導の選挙では、民主派指導者アウンサンスーチー氏=収監中=をはじめとする国民民主連盟(NLD)関係者が排除されたままだ。国軍系政党が多く得票する出来レースになるとされており、軍政打倒により国軍を政治から排除しようとする民主派武装組織「国民防衛隊(PDF)」などが実施に猛反発している。これまでに選挙管理委員会(UEC)関係者をはじめとする、国軍に協力的と見なされた人が攻撃・殺害される事件が散発している。 ミンアウンフライン氏は最近、「国民が参加する治安維持システムが必要だ」と繰り返しており、バゴーにおける演説でも、国勢調査と選挙において「草の根レベルの治安対策」を講じる考えを示した。中高年の一般人男性や退役軍人らを動員する仕組みを想定しているもようだ。 ただ、最近は少数民族武装勢力に対して国軍が劣勢となっており、「全国的な選挙」の実施は絶望的な状況だ。それでも軍政は、中国が体制転換を迫っていることで選挙の実施をアピールするようになっており、中国の意向が選挙の行方を左右する可能性がある。 電子メディアのイラワジが8月31日に伝えたところによると、ミャンマーに面する雲南省瑞麗市当局はこのほど、北東部シャン州北部や中部マンダレー地域で国軍を攻撃しているタアン民族解放軍(TNLA)に対し、国軍との対話を求めた。対話に応じなければ、同国や他の少数民族武装勢力からの供給網が絶たれると警告しており、TNLAはどう対応するか内部で検討中という。