なぜ森保ジャパンは川島、岡崎の両ベテランを招集したのか?
帰国後はFC東京のトップチームではなく、当時主戦場としていたJ3を戦うU-23チームへ合流。敵地で6月30日に行われた藤枝MYFC戦へ向けて、前泊したホテルで開催したミーティングで、安間貴義監督(現FC東京トップチームコーチ)は久保の変化を目の当たりにする。 ともにU-19代表に招集されたFW原大智ともに、ロシア遠征の土産話をチームメイトたちの前で紹介させたときだった。観戦した2試合でゴールを決めるなど、活躍した選手たちの名前を久保があげると予想していた安間監督は、いい意味で裏切られたと振り返ったことがある。 「建英は『岡崎選手の攻守の切り替えの速さが半端なかった』と言ったんですね。以前の彼ならば、そういう点に着目することはなかったので」 ポーランドで開幕したFIFA・U-20ワールドカップを回避しただけでなく、トゥーロン国際大会に臨むU-22日本代表をも飛び越えて久保がフル代表入りを勝ち取った背景は、FC東京の長谷川健太監督が求めてきたハードワークを攻守両面で実践。土台をしっかり整えたうえで、非凡なセンスとテクニックを発揮できるようになった点を抜きには語れない。 潜在能力が急速に解放され始めた原点をたどれば、J3の舞台で不完全燃焼の思いを募らせていた昨夏に目の当たりにした、岡崎の姿に行き着くと言っていい。16歳年上の大先輩との距離がより縮まり、コミュニケーションも取れる今回は、久保にとって新たな刺激と発見が待っているかもしれない。 もちろん、川島と岡崎も経験を伝える立場だけに甘んじるつもりはない。川島はハリルジャパン時代の2016年10月に、チームの雰囲気を盛りたてるメンタルプレーヤーとして復帰しながら、その後にポジションを奪い返してロシア大会へつなげている。 伸び盛りの若手がこれでもかと突きあげ、中堅組が続き、負けてなるものかとベテラン勢が抗う。世代交代に欠かせない図式のなかで、チーム力が上がっていくと考えれば――濃密な経験や実績があるだけでなく、日の丸への矜恃を抱き続ける川島と岡崎の復帰は、9月に始まることが確定したワールドカップ・アジア予選へ向けて、ポジティブな変化を森保ジャパンにもたらすはずだ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)