岸田総理の退陣論も浮上?リクルート事件から今後の展開を予想する【WBS】
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題。岸田派でも政治資金収支報告書にパーティーの収入を少なく記載していた疑いが浮上しました。 裏金問題で大揺れの永田町。12日午後、記者に取り囲まれたのは自民党安倍派の谷川弥一衆院議員。4000万円のキックバックを受け、収支報告書に記載しなかった疑いが持たれていますが、記者からの問いかけには応じませんでした。 岸田総理は、安倍派幹部で裏金疑惑が浮上している松野官房長官と西村経済産業大臣を14日にも更迭することを検討。同じく安倍派に所属する鈴木総務大臣や宮下農林水産大臣についても、交代させる検討に入りました。 その人事を行う岸田総理の足元にも、疑惑は広がりを見せています。岸田派でも、実際の収入よりも少ない額を政治資金収支報告書に記載していた疑いが浮上したのです。 「宏池会(岸田派)の事務局に対して調査を行い、当局に説明を行い、修正の必要があるならば適切に対応する。このように指示をしている」(岸田総理) 一方、12日の国会では松野官房長官に対する不信任決議案が与党の反対多数で否決。笑みを浮かべた松野氏ですが、厳しい指摘は、与党の公明党からも上がっています。 「既に取り沙汰されてることが不問に付されるということではない。つまり、否決したから即信任したと同じ評価をするべきではない」(公明党の山口代表) 立憲民主党は13日、岸田政権は総辞職すべきだとして、内閣不信任決議案を提出しましたが、与党の反対多数で否決されました。 こうした中、岸田総理の退陣について、身内の自民党内から発言がありました。石破元幹事長は12日のテレビ番組で「来年度予算が成立したら辞めますというのはありだ」と述べました。与野党から総理退陣論が出始めたこの問題、今後どこまで発展していくのでしょうか。
今後を読むカギ?リクルート事件とは
官邸キャップの篠原裕明記者は、今後の動きについて35年前のリクルート事件が参考になるといいます。 戦後最大の汚職事件とされる1988年のリクルート事件。リクルートが政・官・財の有力者に対し、値上がりが確実な子会社の未公開株をばらまいたものです。当時の竹下総理をはじめ、閣僚や自民党幹部など数十人の関与が明らかになり、一大スキャンダルへと発展しました。 1988年12月、宮沢大蔵大臣が問題の責任を取って辞任。その後リクルート色を排除するべく、内閣改造に踏み切りますが、交代した閣僚にもリクルートとの関わりが発覚。改造直後から辞任ドミノが起こり、政権の求心力は低下の一途をたどります。 そして、1989年4月、竹下総理は予算の成立と引き換えに内閣総辞職を表明。退陣に追い込まれました。 「結果的にこの事件で在宅起訴された国会議員は2名に過ぎなかったが、閣僚の辞任が相次いだことや竹下総理自身にもリクルートからの借入金が発覚したため、政治的には大きなダメージを受ける形になり、1993年の自民党の野党転落の遠因にもなったと言われている。石破元幹事長の予算成立後に辞任という発言は、リクルート事件の流れを念頭に置いた発言だと感じた。このとき竹下内閣は、本予算の成立と引き換えに退陣を表明した。石破氏は当時、既に国会議員だったため、今の状況をリクルート事件に重ね、政権の先行きを見通したのだと思う」(篠原キャップ) では、実際に岸田総理の辞任にまで発展する可能性はあるのでしょうか? 「今回の裏金問題で岸田総理は14日にも安倍派の閣僚4人を交代させることを検討している。一方で、岸田派にも今回の疑惑が広がっており、問題の全貌はまだ見えていない。万が一、人事の後にさらに疑惑が広がって辞任ドミノという事態になれば、事柄の性質は違うがリクルート事件と同様、政権の退陣にまで至る可能性はあると永田町ではささやかれている」(篠原キャップ) 「リクルート事件当時、『リクルートパージ』という言葉があった。総理を狙っていたものの疑惑に関連した安倍晋太郎氏、宮沢喜一氏、渡辺美智雄氏が軒並み要職から排除され、その後の出世争いに大きく影響した。今回の人事で交代が検討されている安倍派の幹部の議員たちも、今後政治的に厳しい道のりを歩むことも予想される」(篠原キャップ) ※ワールドビジネスサテライト