上田誠仁コラム雲外蒼天/第39回「『駅伝とは……』を真剣に考えてみた」
駅伝とは……、襷とは……
などと思いつつ、12月に入れば全中駅伝、全国高校駅伝、富士山女子駅伝、そして年明けのオープニングを飾るニューイヤー駅伝、お待ちかねの箱根駅伝と、正月三ヶ日は駅伝三昧となる。 駅伝は各区間のコースの特徴や区間距離、さらには予想されるレース展開にいかに対応し持ち味を出し切れるかが焦点となる。 今日もコラムで駅伝を語りつつ、「駅伝とは……」と自分自身に問いを立ててみた。色々思いを巡らせながら、シンプルに「信じる気持ちを未来に届けるチームスポーツである」と思い至った。 駅伝は襷をつながなければならぬ競争であり、決して1人では完結しないチーム競技である。襷とはチームにとって、その駅伝に向けての想いの集積であり、団結と絆の象徴であるはずだ。 襷を作る布は縦糸に対し横糸を織り上げてこそ完成する。ならば縦糸はスタートラインに立つまでにすべてのチームの部員全員に与えられた1年という平等な時間軸である。チームメイトが持つ横糸は、走力や体調それぞれが置かれた状況に関わらず、志と熱量として紡がれてゆかなければならない。 このようにチームとして喜怒哀楽の過程を経て襷の布が織り上がるからこそ、信じる気持ちが育まれる。団結と絆の象徴の襷を掛け、それぞれが信じる気持ちを失わずゴールに向かって懸命に走り抜くのが駅伝であり、その襷の織り上がり方を披露する場が駅伝のレースという舞台ではないだろうか。 実は、自分たちのチーム状況を一番知るのは、代表選手が肩に懸けている襷なのだろう。 100回の信じる気持ちを運んできた箱根駅伝まであと1ヵ月。 ※箱根駅伝番組公式サイト「メッセージ~私と箱根駅伝~」にて上田誠仁氏のコラムが掲載! https://www.ntv.co.jp/hakone/articles/3758ajnfylku7ij1rzqv.html 上田誠仁 Ueda Masahito/1959年生まれ、香川県出身。山梨学院大学スポーツ科学部スポーツ科学科教授。順天堂大学時代に3年連続で箱根駅伝の5区を担い、2年時と3年時に区間賞を獲得。2度の総合優勝に貢献した。卒業後は地元・香川県内の中学・高校教諭を歴任。中学教諭時代の1983年には日本選手権5000mで2位と好成績を収めている。85年に山梨学院大学の陸上競技部監督へ就任し、92年には創部7年、出場6回目にして箱根駅伝総合優勝を達成。以降、出雲駅伝5連覇、箱根総合優勝3回など輝かしい実績を誇るほか、中村祐二や尾方剛、大崎悟史、井上大仁など、のちにマラソンで世界へ羽ばたく選手を多数育成している。2022年4月より山梨学院大学陸上競技部顧問に就任。
月陸編集部