日本にいる象もここからやって来た ピンナワラのアジアゾウ保護施設
何十頭もの象たちが、列をなして商店街を闊歩していく。店先との距離は1メートルほどしかないから、なかなかの迫力だ。とはいえこの行進、特別なイベントというわけではない。1日2回の日課である水浴びを終えた象たちが、川から棲み処へと戻るところなのだ。 古都キャンディの西にあるピンナワラの象の孤児園。100頭ほどを擁する世界有数のアジアゾウの保護施設である。 もともとスリランカには3万頭ものアジア象が生息していたという。英国植民地時代にはハンティング、さらにその後の急激な森林開拓の犠牲となった象たちは、1960年代に絶滅寸前まで追い詰められた。象の保護のため、ようやく腰を上げた政府によって1975年につくられたのがピンナワララ孤児園だ。
この施設は日本にも馴染みが深い。徳山動物園(山口県)や多摩動物公園(東京都)にいる象たちも、ピンナワラから寄贈されたものだ。 国家親善のためや、日本の子供たちに象を見てもらえるという面では意味があるかもしれない。しかし、コンクリートで固められた、狭い日本の動物園に移された象たちが果たして幸せなのか、甚だ疑問ではある。広大な自然に囲まれたピンナワラの象たちにしてみれば、日本に送られることは、「監獄行き」と変わらないようにも思える。 (2015年12月撮影) ※この記事はTHE PAGEの写真家・高橋邦典氏による連載「フォトジャーナル<スリランカの旅>」の一部を抜粋したものです。