一番身近な存在である夫を変えるのが、なかなか難しい。【家庭内のジェンダーギャップ】
完璧主義をやめて家事の手抜きを。それはコストではなく投資。
解決策は2つあります。1つはもっと楽になる方法を考えることです。完璧主義をやめて、家事の手抜きをするということですね。共働きなら、食洗機などの便利家電は、コストではなくて投資です。お掃除ロボットがあれば、家が汚くてイライラすることも減ります。 もっと言えば、家事代行サービスなども取り入れる。こういったサービスの利用を躊躇するのは、お金の面ではなく、心理的な面という人が多いです。「こんなサービスを使うのは贅沢なのでは」「夫が知らない人を家に入れるのを嫌がる」など心理的なハードルが高いようです。でも、利用すれば土曜日の半日、病院に行ったり、カフェに行ったりでき、家事に追われないですむわけです。
あなたが夫と対話することも、社会を変える一歩になる。
もう1つは、夫とちゃんと話してみること。妻がどれほど会社で大事な仕事をしているかを軽んじている夫が多いように感じています。私は、AERA編集長時代に、家事や育児のシェアについて、もっと夫にお願いできないか、それを本人が切り出しにくい場合は私がお願いしていることを本人から夫に伝えてもらったりしたことがあります。 そして本人には、「あなたが夫と対話することが、社会を変える一歩になる」と伝える。夫との交渉は面倒くさいし、後回しにしたい気持ちもあるかもしれません。でも、そうやってみんながやらないから、多くの男性たちが変わらないのだと思うのです。 例えば、週に2日くらい夫が早く帰ってきて、子どものお迎えや家事をする。そして、その2日は、本人は早く帰ってもいいし、残業をしてもいいし、飲み会に行ってもいいわけです。 この自由な2日を手に入れることは、精神的な面からも大事です。まずは、その交渉から始めること。そうすると、夫も家事・育児に参画するようになって、子どもとの関係も変わっていくはずなんです。 ダイバーシティと言うと、企業の中の構成員のダイバーシティの話が多いですが、一人ひとりの人間の中に多様性を持つことも大事です。男性の育休は、男性がその経験をすることによってより成長して豊かになるという側面もあります。それは、ビジネスにも役立つはずです。 夫が家事や育児を経験することは、夫自身のためにもなります。夫が職場で早く帰るファーストペンギン※になれば、その職場の女性たちも助かります。男性が早く帰り始めると、「いつもごめんなさい」と言いながら早く退社している女性たちの罪悪感もなくなります。若い男性社員も、自分が結婚して子どもが生まれたら育休を取りやすい職場だと認識できます。 ※リスクを恐れず初めてのことに挑戦する、ベンチャー精神を持つ個人や企業に対して、尊敬を込めて呼ぶ言葉。ペンギンの群れから、天敵がいるかもしれない海へ魚を求めて最初に飛びこむ1羽のペンギンに由来する。 上司やその上の世代が変わらなくても、誰か1人が勇気を持ってやり始めることが変わるきっかけになる。そして、1つの職場が変わると、隣の職場にも伝わり、会社中に広まっていく。小泉進次郎さんが環境大臣のときに育休を取られたことで、環境省内で男性が育休を取りやすくなったという話も聞きました。 今まで変わらなかった昭和型の企業が変わるきっかけが、1人の男性の育休ということもあるでしょう。身近にいる夫と対話することが、そんなふうに社会を変える一歩になるかもしれません。 ── 一人ひとりのなかにある多様性も大事という視点でみると、自分ごと化しやすいですね。いろいろなお話をありがとうございます。