はりや床材に国産木材を活用した、清水建設が手がけるオフィスビル＝21日、東京都中央区（織田淳嗣撮影）

壁や床などの建材に木材を活用したビルが各地で建設されている。これまで耐火性や耐震性に課題があったが、脱炭素化が求められる中で技術開発が進み、弱点を克服しつつある。国は林業の活性化に向けて国産木材の使用拡大を目指しており、ビルへの活用は有力な用途とみて後押しする。 清水建設は21日、東京都中央区で建設中の木材と鉄骨を組み合わせたオフィスビルを報道陣に公開した。地上12階建てで高さ56メートル。はりの構造材には国産のカラマツを、壁や床にはスギを使用した。 はりは鉄骨と組み合わせており、木材が炭化して遮熱性能を発揮する技術などによって火災時にも2時間は鉄骨が変形せずに守られる。壁には、薄い木の板を繊維が垂直に交わる形で何層も重ねて強度を高めたパネルを用い、鉄骨と組み合わせて耐震性を高めた。 木材の総使用量はスギ約2300本分に相当する約1000立方メートル。木材を使うと鉄骨の製造過程などで排出する二酸化炭素（CO2）を省くことができるため、使わなかった場合と比べ完成までの過程で排出量を2割削減できるという。 担当者は「『コスト削減のため、表面の仕上げだけ木にしてはどうか』との声も聞いたが、脱炭素化などの社会課題に貢献したかった」と説明した。 ■6階以上は国内で約40棟 こうした木材利用ビルは、都内を中心にほかにも建設が進む。三井不動産は今年1月、東京・日本橋で木造賃貸オフィスビルを着工。地上18階建て高さ84メートルで、令和8年9月の完成時には国内で最も高い木材利用ビルとなる。野村不動産は昨年、東京・溜池山王に地上9階の一部木造のオフィスビルを完成させた。林野庁によると3月時点で、構造に木材を活用した6階以上のビルは、計画中を含め国内で約40棟にのぼる。 3年10月には「都市（まち）の木造化推進法」が施行。一般的なビルよりも建設費用が5～30％かさむ木材利用ビルを普及させるため、事業者が国や地方自治体から補助金を得やすくする仕組みが整えられた。 日本の森林は40％が人工林だが、うち60％以上はCO2の吸収力がピークを過ぎた樹齢50年を超える古木だ。林業の担い手不足や高齢化で多くが放置されている。脱炭素化には若い木への植え替えが必要で、木材の需要拡大が急がれる。国は補助金などを通じ、12年に国産木材の利用を、元年比で35％増となる4200万立方メートルに伸ばす考えだ。（織田淳嗣）