70代父の突然死…「遺産が欲しい。」熟年離婚で困窮する50代長女の前に立ちはだかる〈行方不明の弟〉という難問【相続専門税理士が解説】
「失踪宣告の申立て」という方法もある
行方のわからない人が相続財産を取得するのに納得がいかず、不在者財産管理人の申立てをせずに相続をおこないたい、というケースもあるかと思います。 その場合、当該の相続人が7年間以上行方不明であれば、家庭裁判所に「失踪宣告の申立て」をすることができます。 失踪宣告というのは、不在者の生死が7年間不明であるときに、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなされる制度です。この法律的で死亡したとみなされることを「死亡擬制(しぼうぎせい)」といいます。 たとえば、不動産の所有者であるAが死亡し、その法定相続人が、配偶者であるB、長女のC、長男のDの3人ですが、長男であるDが行方不明だったとしましょう。 長男Dに配偶者や子どもがいない場合、長男Dが失踪宣告されて死亡したことになると、長男Dの相続も発生します。その場合、Dの法定相続人はDの直系尊属である妻Bだけになります。つまり、Aの相続人である長男Dの立場を妻Bが引き継いだことになるのです。 そうなるとAの相続については妻Bと長女Cの2人で遺産分割協議を行うことが可能になります。 また、長男Dに配偶者や子どもがいる場合は、長男Dの失踪宣告が行われると長男Dの法定相続人は配偶者と子どもになります。そうなるとAの相続人である長男Dの立場を配偶者と子どもが引き継いだことになるので、Aの相続については、妻B、長女Cだけでなく、長男Dの配偶者と子どもも合わせて遺産分割協議を行わなければなりません。 行方不明で連絡が取れない相続人がいた場合、不在者財産管理と失踪宣告のどちらを選ぶべきなのか、迷う方もいるかもしれません。 その際に、生きていることが間違いない場合や、行方不明になってから7年が経過していない場合には、不在者財産管理制度で遺産分割協議をおこなうことになります。 行方不明になってから7年以上経過していて、生死が不明な場合は、失踪宣告の申立てを選択することになるでしょう。