千葉・限界分譲地のリアル「スローライフもミニマルライフも実現しない」そもそも田舎暮らしは節約に向いていない
コンビニでは野菜が山積みになって売られている
ところで話は少しそれるが、現在の地方都市では旧来の商店街や個人商店は衰退の一途をたどっており、地元住民は大手のチェーン系列店やフランチャイズ店で日用品を購入するのが一般的になっている。しかし、店舗自体は東京に本社のある大手資本の系列だとしても、そこで働く従業員は地元の住民であるし、買い物客も地元住民なので、一歩踏み入れば田舎町の流儀に支配されているケースもある。 それがもっとも顕著なのはコンビニエンスストアで、これはもう従前の個人商店がそのままコンビニに置き換わっただけと言っていいようなお店がある。 僕の前著は地元のコンビニエンスストアでアルバイトをしながら執筆していたものだが、店に来るお客さんはいつも同じ顔ぶれで、しばらく働いているうちに、どのお客がどのタバコを買うか、どのお客がレジ袋を必要としているかまで記憶してしまった。 地域で長く営業を続けるオーナーは、そんな馴染みのお客さんに対して敬語すら使っておらず、よく雑談に興じていた。周辺にスーパーマーケットが少ないコンビニでは、店の外まで所狭しと野菜が積まれて販売されているのはもはや普通の光景であるし、外観は無機質に見える大手フランチャイズであっても、個人商店の流儀がそのまま生きているコンビニは、商品価格や品ぞろえだけでは判断できない役割をも果たしているように思える。
田舎暮らしは節約に向いていない
話を戻すとして、前述のように僕の移住の動機は一番に経済的な事情であって、それ以外に、例えば田舎で起業したいとか、そんな明確な目的意識を持って千葉県に移住してきたわけではなかった。妻と知り合った時はたまたま都内に住んでいたというだけのことで、これまでの人生の中では、僕は田舎町で過ごした時間のほうが圧倒的に長い。 都会と田舎、どちらが好きかと聞かれればもちろん田舎とは答えるが、それは憧れがあったというよりは、自分にとっては田舎の方に馴染みがあるからにすぎず、年齢的にも今さら田舎で何か新しいことに挑戦する気にもなれなかった。むしろ、大げさな言い方になるが、僕は入籍を機会に、自分の人生の整理を始めるつもりで千葉県にやってきたのである。 田舎暮らしに関する情報を見ていると、例えば「スローライフ」といったような一面的なイメージの文言を見かけることがある。だが、僕は田舎での暮らしがのんびりできるものだとは思わないし、率直に言って田舎暮らしは節約にも向いていないと思う(できないわけではないが)。 近年、無駄な持ち物を持たない「ミニマリスト」という暮らし方が時折メディアに登場するが、あれこそ田舎暮らしの対極に位置するものという気がする。都会ほどサービスが充実していない田舎では、どうしても自分でこなさなければならない用事が増えるので、そのために必要な道具(例えば草刈りの鎌など)は増えていく一方である。 買い置きをしたり道具をそろえるのであれば、当然その保管スペースも必要になってくる。 娯楽に関しては、もちろん都会のような娯楽施設はないので、そういったところに出向いて余暇を過ごすことはない。せいぜい、たまに妻と成田市や千葉市などの大型商業施設に出かける程度であろうか。 僕自身は昔から都会でなければできないような趣味を持ったことがなく、都会でやることと言えば古本を買って回る程度だったので、あまり自分の嗜好を一般化して語れるものではないとは思うが、特に退屈で不満に感じることはない。