どこに行くにも車で2時間かからない佐賀県…Uターンし「おもしろい未来を描ける社会をつくる」をサポート
――内山地区の拠点でいま取り組んでいる活動について教えてほしい。
「福岡市の企業『しくみデザイン』と連携し、町の子どもの居場所事業としてICT教育を行っている。放課後に児童がタブレット端末でアプリを操作して自分のゲームを作っている。子どもの居場所事業は大半の自治体が子ども食堂。ICT教育は珍しい」
「『もっとプログラミングがしたい』『将来はゲームを開発したい』と熱望する子も出てきた。そんな子たち向けには今春から、別の福岡県内の企業と一緒にレベルの高い有料教室を提供している」
――取材に訪れて、地区住民との関係が紡がれている印象を持った。地区への思いやこれからの展望は。
「子どもたちが集まるようになって、お年寄りが喜んでくれている。地区の空き地を農園にしたり、芸術家に短期間の滞在先を提供したりする活動を通じて、地域ににぎわいをもたらせたらいい」
「地域住民の健康を見守る『コミュニティー・ナース』の事業を友人と始めたいという構想もある。内山地区を『死ぬまで楽しく暮らすことのできるモデルエリア』にしようと夢想している。私たちを受け入れてくれたこの地区を面白くしたい。いろんな人がいろんなことを始められるように、間を取り持ちサポートしていくつもりだ」
◆ささき・もとやす=旧西有田町(現有田町)出身。早稲田大大学院を経て大正製薬で創薬の研究者として勤務した。2011年の東日本大震災で、ボランティアを束ねて支援する活動を体験したことをきっかけに、有田町に家族でUターン。町地域おこし協力隊員を経て、18年にNPO法人「灯す屋」を発足し、代表を務めている。妻、小5の長男、幼稚園児の次男と4人暮らし。妻は同期入社の創薬研究者で、「自分よりも妻が退社するのを会社が惜しんだ」と笑う。長男が所属する少年野球の審判や球場の線引きが楽しく、日焼けも勲章だ。