片山晋呉のプロアマ失態問題の背景にある男子ゴルフツアーの惨状
プロは、その大事なお客様をもてなす「ホスト」「ホステス」になるわけで、プロアマ戦では「賞金ランク上位者」「主催者推薦出場者=人気、注目度の高いプロ」を用意し、喜んでもらおうとする。 JGTOはプロアマ戦を体調不良などを理由に欠場、途中棄権したプロ、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)は欠場したプロをツアー競技本番に出場させないルールを設けていることからも、いかにツアーがプロアマ戦を重要視しているかがわかるだろう。 そして今回、片山の行動をJGTOが大きな問題にしたのには、ある背景がある。 今シーズンの男女各ツアーのトーナメント数をご存じだろうか? 女子は3月頭に開幕し、11月末まで空き週がほぼない38試合を予定している。対して男子はシーズン当初のアジアンツアーとの共催2試合を含めて26試合だけ。女子の約3分の2しかない。若く、かわいく、華やかな若手の台頭が著しい女子ツアーは各企業からのトーナメント開催打診が引きも切らない。 「どうせ接待するなら、かわいい女の子で」という理由も厳然としてあるし、男子より安上がりで済むこともあってバブルな状況が続いている。 一方の男子ツアーはどん底なのだ。 最大の目玉の松山英樹、石川遼は松山が米ツアーに専念、石川は今季、米ツアー出場権を失い、日本ツアーに戻ったが、不振続き。古閑美保の夫でもある小平智が米ツアー優勝してブレークしたものの、小平も米ツアーに目を向けている。売り物になるプロがいないのだから、主催者、スポンサー離れが進んでも仕方ないのが、現状。そのタイミングで片山の問題が起きたため、なおさら神経質になったという背景がある。
男子ツアーは90年代まで年間40試合近い試合数を誇っていた。 AONがいて、丸山茂樹、田中秀道らが若手で元気だった時代だ。逆に試合数維持に必死だった女子ツアーは当時の樋口久子会長、岡本綾子副会長という「2枚看板」が企業回りに奔走する一方、プロに徹底した教育を施し、主催者、スポンサーへの意識を高めさせてきた。 そして21世紀に入って、宮里藍が出現、宮里藍を見てゴルフを始めた“藍チルドレン”の台頭があり、一気に女子ゴルフブームが訪れた。男女の立場が逆転した今、青木功氏は、会長に就任すると昨年3月の女子ツアー開幕戦ダイキンオーキッドレディースのプロアマ戦に出場して、その実情を肌で知った。 「驚いた。お客さんのもてなし方や、競技の方法など大変勉強になったし、男子ツアーにも生かしていきたい」と話していた。女子に見習い、ようやく主催者、スポンサー対策に本腰を入れるようになったわけで、今回の騒動は、その矢先の出来事だったわけである。 プロにとってファンは必要不可欠な存在だろう。 ファンが増えなければ、各企業は広告効果も感じないし、トーナメント開催に興味を示しにくい。本末転倒かもしれないが、ファンを増やす前に、トーナメントを成立させるために、各企業=主催者、スポンサーを増やさなければ、自分たちの生活の場が維持できないのは、厳然たる事実。本来、スポンサーを集める営業は、プロゴルファーの仕事ではないのかもしれないが、そこで接待をしなければ、男子ツアーが存続できないという厳しい現実がある。一人ひとりがその責務を負っているわけである。 片山だけでなく、すべてのプロゴルファーが今一度考えるべきもの―。今回の騒動は、現在の日本男子ツアーが置かれている立場と、その構造を象徴するような事件なのかもしれない