イ・ドンフィが殺人を告白した10歳少女を弁護...事件の裏にある"虐待"と向き合う「幼い依頼人」
「10歳少女の衝撃告白――私が弟を殺しました」。そんな驚愕のキャッチコピーが記憶に新しい韓国映画「幼い依頼人」(韓国は2019年、日本は2020年に公開)が、9月19日(木)ほかにKNTVで放送される。 【写真を見る】「幼い依頼人」主人公のユン・ジョンヨプを演じるイ・ドンフィ 本作は、2013年に韓国で実際に起こった「漆谷(チルゴク)継母児童虐待死亡事件」をベースに描かれる実録サスペンス。監督は「私は王である!」で知られるチャン・ギュソン、主人公のユン・ジョンヨプは、「ブラザー」や「エクストリーム・ジョブ」のイ・ドンフィが演じる。 ロースクールを卒業して、これから華々しく法曹界で出世街道を歩む"はず"だったジョンヨプは、ことごとく就職活動に失敗し、姉に叱られる。そんな彼女の勧めで児童福祉館に就職すると、ダビン(チェ・ミョンビン)、ミンジュン(イ・ジュウォン)姉弟と出会った。ダビンは、継母・ジスク(ユソン)から暴力を受けたと告白するが...。 その後、ジョンヨプ目当てに児童福祉館を訪ねてくるようになった姉弟。2人に手を焼きつつも、一緒にファストフード店に行ったり、動物園に行ったりと交流を深めていたが、法律事務所に就職できてからは疎遠となっていた。 そんななか、ミンジュンが殺害された。なんと被疑者となったのはダビンだった。連絡を受けたジョンヨプは「ダビン待ってくれ!」と警察に連行される彼女を追いかけるも、時すでに遅し。彼は後悔に苛まれながらもダビンの弁護士となる決意をする。 本作では、ジスクが姉弟に虐待をするシーンが描かれている。当然、子供たちの泣き叫ぶ声は隣人たちの耳に届いているが、「自分には関係のないこと」とスルー。虐待が日常茶飯事だったこともあってか「また始まった」と意に介さず生活しているのだ。事件がニュースで報道された際、近所の連中は「十中八九ジスクの仕業だろう」と思ったはず。もちろん諸悪の根源は虐待にあるが、周囲の人間はどうすることもできなかったのだろうか。本当にあった事件が題材となっているだけに、怒りや悲しみが込み上げてくる。 ...とはいえ、自分が同じ立場になったとき、事件を阻止することはできたのか?という疑問も残る。この問題とは、一生付き合っていくことになるだろう。 ジョンヨプは、ダビンやその家族の関係性に違和感を覚えながらも、行動を起こすことができなかった一人だ。結果的に尊い命がこの世から消えてしまったため「あのときこうしていれば」と悔しい気持ちでいっぱいだっただろう。どうかジョンヨプがダビンの救世主であってほしい、どうか彼女の今後の人生が明るいものでありますように、と願うばかりである―。 ここまで思いを馳せてしまうのは、俳優陣の体当たりの演技があってこそ。たとえば、ドンフィが演じるジョンヨプが苦悩するシーンや、弁護人になってから目に宿る「魂」には釘付けになるし、冒頭はだらしのない男だったのに、後半になるにつれて彼の存在が心強くなるのは不思議な感覚だ。 視聴後、さまざまな想いが去来する「幼い依頼人」。作品の内容も相まって重い十字架を背負うことになるかもしれないが、それもすべて受け止めて今後生きるべきではないか。そんなことを思う。 文=浜瀬将樹
HOMINIS
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