ドラマ解説者が選定する、今だからこそ「見てからロケ地に行きたい」朝ドラ3選
連続テレビ小説『ちりとてちん』(2007年後期)
2作目は貫地谷しほり主演『ちりとてちん』で、主な舞台は、福井・小浜と大阪の2つ。福井では、心配性でネガティブ思考の和田喜代美(貫地谷しほり)が、同姓同名で才色兼備の和田清海(佐藤めぐみ)に劣等感を抱く様子が描かれた。喜代美は自分を変えるために単身大阪へ向かい、上方落語の世界に惹かれていく。紆余曲折を経て落語家・徒然亭草若(渡瀬恒彦)に弟子入りし、修行を経て芸名「若狭」を与えられ、兄弟子・草々(青木崇高)との結婚や母親になるまでが描かれた。 視聴者の人気が高かったのは、喜代美の母・糸子(和久井映見)と師匠の草若。楽天的な糸子、ひょうひょうとつかみどころのない草若が根暗で泣き虫な喜代美を変えていく様子が痛快だった。ヒロインの人物造形から、俳優たちの見事な落語とその解説、挿入歌の使用など、朝ドラとしては異例づくしの作品。大小の伏線を散りばめながら“伝統継承”と“家族愛”を描く藤本有紀の脚本は、喜怒哀楽あふれる比類なき人情エンタメとして、今なお熱狂的なファンが多い。 当時、福井県が朝ドラの舞台になるのは初めてで、現地は大いに盛り上がった。風情ある町並みや海岸、商店街や若狭塗メーカー喜代美が通った小学校、小浜駅などのロケ地巡りがしやすいのも嬉しいところ。五木ひろしの本人役や上沼恵美子のナレーションなども含め、大阪局制作らしく細部まで楽しませた。 ストーリー 心配性でネガティブ思考の和田喜代美(貫地谷しほり)は、大阪で出会う上方落語を通して人生を輝かせていく。恋あり涙あり笑いありの人情ドラマ。
連続テレビ小説『マッサン』(2014年後期)
3作目は玉山鉄二主演『マッサン』で、主な舞台は、広島、大阪、北海道の3つ。広島の造り酒屋の跡取りとして生まれた亀山政春(玉山鉄二)はウイスキーづくりを学ぶためにわたったスコットランドでエリー(シャーロット・ケイト・フォックス)と出会い結婚。帰国後、大阪で鴨居欣次郎(堤真一)と出会い、醸造工場の建設に関わるが、意見の相違から決別し、ウイスキー作りに適した北海道余市へ移住する。そこでも政春夫婦は資金難や戦争などの困難に見舞われるが、2人で乗り越えていく様子が感動を誘った。 政春はニッカウヰスキー創業者・竹鶴政孝、鴨居はサントリー創業者・鳥井信治郎がモデルの物語だけに説得力は十分。ウイスキーの売り上げが急激に伸びただけでなく、北海道のニッカウヰスキー原酒工場などへロケ地観光をする人が相次いだ。印象的だったのは、日本語が話せないシャーロットの苦労と奮闘。エリーの姿とシンクロして感情移入する人が続出した。中島みゆきの主題歌『麦の唄』も夫婦の物語を力強く後押しした。 ストーリー 国産初のウイスキー製造のため奔走する夫婦を描く人情喜劇。苦難の連続ながら夢に生きた日本人の底力に勇気づけられる。
(本文・木村隆志)