【デーブ大久保コラム】現在は投高打低の時代になっています。いつかはまたこれが逆転しますよ
【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】 野球解説者の仲間内で少し話題になっていたことがあります。今回、記録集計号の特集ということで、少し関連があるのかな、ということでまあ、今回のテーマは投高打低です。今年は明らかにそういう兆候がありました。 【選手データ】近藤健介 プロフィール・通算成績 打者を見ても分かるように、日本人選手で打率3割を超えたのはソフトバンクの近藤健介のみです。何人のプロ野球選手が12球団に在籍していると思います? ちょっと分からないので、皆さん各自で調べてみてくださいね。その中で1人のみというのはおかしいのでは? と思う方も多いと思います。 話は私が楽天の打撃コーチをしていた時代です。その前までは比較的飛ぶボールだったのですが、そこから「統一球」という名の飛ばないボールが採用されました。そこから数年して、元の基準になったんです。そうなると打球が飛ぶので打者有利になっていきました。 ここから投手が進化していったと見ています。トラックマンの導入でボールの軸が可視化できるようになり、どういう投げ方をすればいいのか、どういうトレーニングをすればボールをスピードアップできるのかが分かるようになっていきます。その進化により、現在では多くの投手が150キロを超える真っすぐを投げられるようになっています。 そしてもう一つの変化。これまでは投手はどこへ投げろ、と言っていましたか? 今でもそうかもしれませんが「低め」、ですよね。投手経験のある読者の皆さんもいると思いますが、現役当時は監督などからひたすら「低めに投げろ」と言われたはずです。 その常識が変化してきています。つまり「高め」を狙って投げるようになっているのです。現役のときに、ローボール打者だった私は、高めの速いボールは苦手だったんです。でもあまり投げてこないから、その分気楽ではありました。一方で、捕手として何度か、高めを要求しました。でも当時の常識は「低め」だったので、いい配球だとは思われなかったのです。 実際に高めの真っすぐというのは、実はピッチャーにとっては一番投げやすく、リリースのときに力を入れられるボールでもあります。150キロの真っすぐを投げられる投手が、そこに思い切り投げてきたら、簡単には打ち返せません。そういう傾向がデータでも出てきているのだと思いますので、現在の配球も高めを投げさせることが多くなりました。 メジャーでも典型的ですよね。高めのストライクゾーンにどんどん投げ込んできています。そうなると簡単にはヒットは打てないのです。そういう部分で投手が進化したからこそ、打者が苦戦するようになった、というのが私や仲間の見解です。 では、このまま投手有利が続くのか……。そうは思いません。バットに当てる角度を研究したり、高めに負けないパワーを身に付けてくると思いますね。そうやって野球界は投打で有利不利を繰り返し進化しているのです。
週刊ベースボール