映像業界の実話が映画化・主人公をどん底に落とすヒロイン役の小西桜子「人格を否定せずに演じた」
記号としてキャラクター化させないように
──撮影に入ってからも、脚本に修正を加えるような感じだったのでしょうか? 小西 そうですね。修正もあったし、「ここのシーンの展開は、こっちのほうがいいんじゃないか?」みたいなことが結構ありました。監督の渡邉(崇)さん自身も初めて映画の脚本を書いて撮るということだったので、そこはわりとオープンなスタンスだったんです。 ──ほかに撮影中に印象に残っているエピソードは? 小西 拓也とりえが卓球で勝負して、勝ったりえが拓也にテキーラのショットを飲ませるシーンがあるんです。だけどカメラが回ると、私がどうしても勝てなくて……。しょうがないから「勝てないのに飲ませている」という設定に急遽変更しました(笑)。 ──それにしても実話が基になっているということで、演じるのが難しかった面もあったのでは? 小西 たしかに拓也に関しては本当に体験した方の話が基になっているんですけど、私が演じたりえ自体は架空の人物なんですよ。ですから、そこに関しては「本物に似せなきゃ」といったプレッシャーはなかったんです。それよりも神経を尖らせたのは、センシティブな内容なだけに、映画として観た方に不快な思いをさせたり、傷つけたりすることは絶対にあってはいけないなということ。そこはこの映画のチーム全員が共通認識として持っていましたし、ずっと話していたところでした。 ──りえはキャバクラ嬢として働き、家庭環境が複雑という面を持っています。小西さんの実生活から、かけ離れている気もするのですが。 小西 たしかに自分がりえと同じような境遇にあったことはないのですが、実際にりえと同じような経験をされている方は多いと思うんです。自分の身近な体験ではなかったとしても、なるべくそこに寄り添っていきたいというのが考えとしてありました。あとは「夜の街で働いているから~」とか「家庭が複雑だから~」といった感じで、記号としてキャラクター化させないように気をつけました。 ▽こにし・さくらこ 1998年3月29日生まれ、埼玉県出身。17年からモデルとして活動を開始。MVや自主映画の出演などを経て、20年には応募総数約3000人の中から映画『初恋』のヒロインに抜擢される。そのほか、『ファンシー』『猿楽町で会いましょう』『映像研には手を出すな!』『佐々木、イン、マイマイン』や、連続ドラマ『死にたい夜にかぎって』など出演作多数。 【後編】完全にフリーランスから小栗旬率いる事務所所属へ、小西桜子「すごく恵まれた環境」は下の関連記事からご覧ください。
小野田 衛