センバツ開催可否、きょう決定 「プレーで感動与えたい」 鹿児島城西、気持ち切らさず /鹿児島
新型コロナウイルスの感染が広がる中、第92回選抜高校野球大会は11日の臨時運営委員会で開催の可否が決まる。4日の第3回運営委員会で無観客開催を前提に準備していく方針が決まったが、最終判断は11日に持ち越していた。九州代表・鹿児島城西(鹿児島県日置市)の選手らは先行きが見えない中、懸命に前を向く。【林壮一郎】 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 「世の中を見てみれば他の競技は全国大会が中止になったり、休部になったりしていて、ウイルスで苦しんでいる人もたくさんいる。こういう状況でも野球をできていることに感謝しよう」 無観客での開催か、中止か。感染拡大の影響で選抜も予断を許さない中、鹿児島城西の古市龍輝主将(2年)は4日夜、部員のグループラインに思いをつづった。 その日、大会運営委が無観客開催を前提に準備を進める方針を決定。無観客は長い甲子園の歴史で春夏を通じて初めての事態で、方針を伝えられた古市主将は練習後、グラウンドに集まった報道陣に複雑な胸中を明かしていた。 「世の中の状況を見れば中止になってもおかしくない中、開催されれば自分たちのプレーで感動を与えたい。11日の最終決定まで気持ちを切らさずいい準備をしていきたい」 2019年秋の鹿児島大会で準優勝、九州大会でも4強入りを果たし、その戦いぶりが認められてつかんだ初の甲子園。勇躍して冬を越し、大舞台へ腕ぶす春を迎えたが、大会開催さえ危ぶまれる未曽有の事態に動揺を隠しようもない。 不安で練習に集中できない部員もいた。古市主将自身、郷里の鹿児島県・屋久島では地元の人たちが甲子園で掲げる横断幕を作ってくれていた。大会が開催されても無観客であれば応援には来てもらえず、代表決定を喜んでくれた家族や友人、世話になった恩人たちに晴れ舞台を見てもらえなくなる。 「選手たちがつかんだ夢なので何とか開催してほしいと考えれば考えるほど眠れない日々だが、11日の決定に従うしかない。それまで私たちは準備することしかできません」。佐々木誠監督(54)は選手たちの心情に思いを致しながら、自らを奮い立たせるように言った。 プロ野球・福岡ダイエー(現ソフトバンク)などで活躍。プロのコーチや社会人野球の監督を経て18年1月に就任した百戦錬磨の経験をもってしても、難しいかじ取りが続く。 翌5日朝のグラウンド。長年チームを指導している井上隆三部長(37)が円陣を組んだ選手たちに語りかけた。「こういう状況で野球をやらせてもらっているのはありがたいことだ。今、すごく苦労されている方、困難に遭っている方がいることを忘れず、野球を大事にしながらやってほしい」 部員だけになった円陣の中で古市主将が締めくくった。「井上先生からもあったように、今、困難に遭っている人たちがたくさんいる。自分たちが野球をできていることに感謝してやっていこう」 「おうっ」。力強くうなずく選手たち。そして、この日の練習が始まった。