「西日本並みの治水対策を」 豪雨災害への対応テーマに「21世紀山形県民会議」
山形新聞・山形放送が主催し、豊かな郷土づくりに向けた提唱を行う「21世紀県民会議」が14日、東京で開かれました。県内で頻発する豪雨など災害への備えについて、意見が交わされ、官民が連携して取り組む重要性を共有しました。 会議には、県選出の国会議員や吉村美栄子知事ら行政のトップ、それに有識者らが出席しました。ことしのテーマは「頻発する豪雨災害県民に迫る危機への備え」です。 主催者を代表し、山形新聞の寒河江浩二会長が「県民の命と暮らしを守るための方策を多角的に議論する必要がある」と述べました。 会議では初めに、甚大な被害が出たことし7月の豪雨災害の実態や緊急的な対応について、意見が交わされました。各自治体や団体のトップからは、西日本並みの雨量を想定した治水対策や、教育などを通した防災意識の向上などといった提言がありました。 吉村知事「頻発、激甚化する自然災害に対して、効果的かつ効率的に被災地の住民に避難行動を促したり避難所運営などを行うためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)を積極的に取り入れていく必要があると考える。避難所でのマイナンバーカードによる入退管理などのDX導入について市町村と連携して進めていく」 矢口明子酒田市長「河道の掘削、樹木の伐採、これが一番即効性がある対策だと思っているので、ぜひ進めていきたいし、水位計が付いていないとそういう情報提供もないような状況なので、ぜひ水位計の設置も前向きに検討いただけたらありがたい」 加藤文明戸沢村長「これまでの治水対策などは基礎が高い住宅への絶対的信頼と安心感が『避難しなくても安全』との先入観を抱かせたことは避難に関する大きな課題。地区全体、村全体の防災意識向上を図らなければならないと考えている」 県商工会議所連合会 矢野秀弥会長「脆弱なインフラ、ライフラインは、被災地域の生活再建の遅れに直結するとともに、被災事業者の事業再建、雇用維持にも大きな影響を及ぼし、人口流出の加速化を招くなど地域存続の危機に瀕することになる。今後河川整備計画の計画降水量を西日本並みに上げての治水対策、道路対策が必要不可欠」 県品確安全協議会渋谷忠昌会長「東北地方の河川の流下能力は西日本の河川と比較して低い。1日あたりの雨量は最上川は84ミリ、九州の筑後川は260ミリで、3倍以上の開きがある。総合的な治水対策により、災害発生リスクの低減を図っていく必要がある」 県自主防災アドバイザー細谷真紀子氏「旧来からの『行政などの公助こそ防災』という認識からアップデートできていない現状や、防災活動が一定の世代にのみ関わりが偏っている現状があると思う。事前防災への投資、女性のリーダーシップ、様々な主体との連携を国際的なレベルで先進例となっていくような活動を期待している」 続いて、気候変動時代の持続可能な地域づくりについて県選出の国会議員から提言がありました。 遠藤利明衆院議員「学校は実は地域において場合によっては最大の避難地かもしれない。教育と災害の拠点と両方の活用があるのではないかと思うので、これから防災の組織の中で考えていかなければならないと思う」 鈴木憲和衆院議員「激甚化する気象災害は私たちがすぐにコントロールすることが当然できないので、災害が起こりうる中でどうやって魅力的な地域を作るかということだろう」 加藤鮎子衆院議員「脱炭素もしっかりやらないといけない。災害や地域の安全、安心を守りながら再生可能エネルギーをしっかり進めていき、しかもその潤いが地域に還元される仕組みを整えていくことが大事」 菊池大二郎衆院議員「今までできなかった河川への手当、山林への手当、道路だけではない維持管理をどうしていくかが県も市町村も一番の課題ではないか。国もしっかり理解しながら予算編成していく姿勢が必要だろう」 舟山康江参院議員「田んぼダムの機能や、どこに流してどこで受け止めてということを全体として、地域全体で取り組んでいかなければならない大きな課題。災害時には、ダム機能をまさに“体を張って”農地が果たした代わりに農作物が全部だめになった時に、その補償をどうするかというところはまだ今は足りない」 芳賀道也参院議員「中小企業、小さな店、個人への支援が少ない。激甚化する災害が次々と起こっているので、このような人たちを対象にした支援のルールはしっかりと作らなければならない」 また、アドバイザーなどとして出席した有識者らは、継続的に対策に取り組む重要性を指摘しました。 東北大学大学院風間聡教授「最上川の官民連携のネットワークでは、民間が河川の木を切ってバイオマス発電で使っている。そうすると温暖化対策にもなるし、河川の流水が増えて土砂が河床にたまらなくなり一石二鳥。継続して啓発活動を続けていつでも防災や洪水のことを考えているような社会ができるといいのではないか」 国土交通省東北地方整備局西村拓局長「甚大な被害を回避し、早期の復旧復興までを見据えた事前防災や強靭化対策が今まで以上に重要になってくると考えている」 出席者はハード、ソフトの両面から官民が連携して災害対策に取り組む必要性を共有しました。