薬局に「在庫がない」異常事態…医療現場の実情は【バンキシャ!】
日テレNEWS NNN
本格的な冬の到来を前に、薬不足がより深刻になっています。厚生労働相が、製薬会社のトップを集めて増産するよう直談判する事態に。バンキシャ!は、この難局をどうにか乗り切ろうとする医療の現場を取材しました。(真相報道バンキシャ!) 10日、バンキシャ!は都内の薬局へ。ここでは約2500種類の薬を取り扱っている。全国で広がる薬不足。その状況は…。 ──(記者)実際どういった薬が不足している? 葵薬局 目黒駅前店 管理薬剤師・川中彬寛さん 「せき止め」 薬局のケースには薬がひとつもない。在庫がなくなったらクリニックに伝えるようメモに書かれていた。 別のせき止めの薬のケースにも「もうない!!」というメモが。ケースの中を数えると11錠しか入っていなかった。 葵薬局 目黒駅前店 管理薬剤師・川中彬寛さん 「何にもならない。1人分にも足りない」 たんを切る薬も在庫はたったの1錠。 葵薬局 目黒駅前店 管理薬剤師・川中彬寛さん 「どうしようもないです。もうその一言につきます」 東京・荒川区にある別の薬局では、10日の朝、薬剤師が紙を持ち向かいのクリニックへ入っていった。 田辺薬局 薬剤師 「きょうの在庫表になります」 武田内科小児科クリニック 武田千賀子副院長 「ほとんど…」 田辺薬局 薬剤師 「ほとんど在庫がありません」 薬があるかどうか毎朝、報告。リストには「在庫なし」の文字が並んでいた。せき止めの薬が「在庫なし」という状態が、1週間続くという異常事態に陥っていた。そのため薬をもらえなかった人も…。 女性 「せき止めの薬がない(と医師から聞いた)」 風邪でせきが止まらないという女性。実は1週間前もせき止めがもらえず、その時は…。 「前回は近隣の薬局を3軒回って、やっとせき止めを手に入れられた」と話す女性。今回はどうするのか。 女性 「またせき止めの薬を何店舗も自分で探さなきゃいけない。もう雨なので、時間も遅いので…」 処方薬を諦め、自宅にある市販のせき止めでしのぐという。 さらに、11日にバンキシャ!が出会ったのは4歳の男の子とその母親。 息子がせきの症状の母親 「(息子の)のどの痛みとせきと」 息子は1週間ほど前から風邪の症状があり、診察を受け薬局に来たという。しかし…。 息子がせきの症状の母親 「せき止めがないということだった。他の薬局に行ってください(と言われた)」 そこで、この母親は自転車で600メートルほど離れた別の薬局へ行くことに。冬のような寒さの中で薬局をハシゴ。薬は手に入るのか…。 ──お母さん、呼ばれて説明を受けていますね そして…。 ──どうでしたか? 息子がせきの症状の母親 「せき止めあったので、無事もらえました」 ──お子さん用ありました? 息子がせきの症状の母親 「ありました」 1週間分のせき止めを手に入れることができた。この日の夜。 息子がせきの症状の母親 「飲めたね」 息子(4) 「ごちそうさまでした」 なぜ、いませき止めの薬などが不足しているのか。医薬品に詳しい専門家は、2つの原因を指摘する。 神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授 「せき止め、たん切りの薬については、インフルエンザの急拡大によって需要が増えている。需要を満たすだけの供給ができていない」 もうひとつの原因は、3年ほど前から相次ぐジェネリック医薬品メーカーの不祥事。すべての注文に対応できない限定出荷と供給停止になった薬も。 この状況を医療現場はどう乗り越えようとしているのか。東京・杉並区にある医院には10日、風邪の症状がある2歳の女の子が…。 田村院長 「せきは結構でますよね?」 風邪の症状がある娘の母親 「最初いつもせきから始まる」 田村院長 「せき止めをお出しするんだけど、今せき止めが1個足りないので、もう1つのせき止めとたん切りを出します」 この医院では、同じような効果がある薬を代わりに出したり、処方する日数を短くしたりして薬不足をしのいでいるという。 風邪の症状がある娘の母親 「もし(薬が)なかったらどうしようと思いながら来た」 「いつもと違う感じのお薬ではありました」 しかし、代わりの薬を出すことで新たな問題も。 田村院長 「一般的なせき止めが足りない。ぜんそくの方に出すせき止めを処方するケースが増えてくる」 このまま薬不足が続くと、ぜんそくの患者に薬が行き届かなくなるおそれもあるという。この薬不足はいつまで続くのか。 神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授 「(薬の)増産は年明けから。おそらく数か月、春ぐらいには、改善が見込まれるのではないか」 しかし、根本的な解決にはなっていないと指摘する。 神奈川県立保健福祉大学大学院・坂巻弘之教授 「もう少し安心して医療を提供できるように、薬の提供について企業・厚生労働省が責任を持つことが必要である」 (11月12日放送『真相報道バンキシャ!』より)