「ほんとうに革命的なこと」高橋大輔プロデュース『滑走屋』が来年3月に再演、振付担当・鈴木ゆまとともに描く舞台
■ 「また新しい『滑走屋』ができあがる」 『滑走屋』から糧を得た鈴木ゆまだが、『滑走屋』を画期的な公演とした原動力の一つ、集団のフォーメーションやスケーターたちが描く構図の振り付けは、東京パノラマシアターなどで培われたものだ。『桃太郎』でも限られた舞台空間において、多くの出演者が狭さを感じさせない集団での踊りを披露したが、そこにも「共有」の大切さがあると言う。 「『桃太郎』でも1個、1個すごく丁寧に作りました。みんなのフォーメーションも全員が理解したり、そのシーン、ナンバーで目指すところとかを話し合ったり、時間を重ねて共有したことが大きいと思います」 『滑走屋』は鈴木ゆまから大きな糧を得て、鈴木ゆまも『滑走屋』から得たものがあった。幸福な関係にあるとも言える『滑走屋』は、来年の3月8・9日、第2回公演が広島の「ひろしんビッグウェーブ」で開催される。鈴木ゆまも再び参加する。 「広島で上演できるということで、そこに至るまで、スタッフさんそして福岡公演から応援してくださったファンの方々に、本当にありがとうございますとお伝えしたいです。そして、こういう素晴らしい機会をくれた高橋さんにも本当に感謝しています。 再演とは言いつつ、今回新しいスケーターさんも出られますし、高橋さんと話してみても、きっと同じにはならないと思うんですね。また新しい『滑走屋』ができあがるし、同じでは駄目だというプレッシャーがあるので、基本的なナンバーは同じにせよ、私としては新しいものをつくるという気持ちで挑んでいきたいなと思います。この前、福岡公演を観返してみたんですけど、私の中でも『ここ、もうちょっとこうしたいな』『もう少しこうだったら世界観が伝わりやすいな』と感じたところがいっぱいあるので、大輔さんや哉中ちゃん、演出チームで話しながらスケールアップした『滑走屋』を創造したいと思っています」 そしてこう語った。 「大輔さんが『滑走屋』を始めたということは、ほんとうに革命的なことだと思っているんですよ」 それは鈴木ゆまの言葉を思い起こさせた。 「新しいことをやるというのはすごく勇気がいるし、批判もされることがあって、お芝居だけとかダンスだけだとすごく分かりやすいんですけど、どちらでもなくどちらでもあるという新しい表現方法を提示していくという思いでやってきました」 「革命的なこと」という高橋への言葉は、どこかで志を等しくするであろうことから来る共感と賛辞であるようだった。 そして再び、公演への日々が始まろうとしている。
松原 孝臣