YouTubeの切り抜き動画が“収益化停止”に クリエイターへの影響や今後の動向を考える
YouTubeで昨今続いている切り抜き動画全盛時代。収益化を剥奪されたという報告がちらほらではじめているなか、切り抜かれる側であるYouTubeクリエイターたちに影響は出るのか。今回は切り抜き動画の収益化停止やYouTuberたちへの影響を考えてみたい。 【写真】「チャンネルの収益化は無効」YouTubeからのメール内容 推し活的なものから副業として取り組まれているものなど、さまざまな需要がある切り抜き動画。そんな切り抜き動画が注目を集めたのは、ひろゆき氏の2時間という長時間配信の1部分を切り取り、テロップなどを追加、数分間のコンテンツに編集したものが大ヒットしたことだ。 その後、ひろゆき氏公認切り抜きチャンネルが誕生すると、2021年7月にはUUUMが東海オンエアの切り抜き動画の制作と収益化を許諾制で認めたほか、ホロライブを運営するカバー社も2022年6月、同社が定めるルールと投稿プラットフォームの利用規約を遵守することを前提に収益化を認めるなど、公認切り抜きチャンネルが次々に登場。切り抜き動画は認知度アップや人気拡大を図るYouTuberたちや切り抜き動画を作る“切り抜き職人”をはじめ、YouTubeユーザーにとって欠かせないコンテンツとなっていったのだった。 以前から収益化停止の報告があちこちであがっていた切り抜き動画だが、大きな注目を集めるきっかけになったのは、VTuberグループ「hololive English(ホロライブEN)」の動画を和訳したコンテンツをYouTubeで投稿しているがるぜん(チャンネル登録者数10.8万人/7月14日時点)の投稿だ。 がるぜんは2024年7月7日、YouTube側から「チャンネルの大部分がYouTubeパートナープログラムのポリシーに準拠していない」「チャンネルの収益化は無効」と記載されたメールを受け取ったことを報告。これをがるぜんは「YouTubeに存在する切り抜き動画は全てプロモーションであり、ポリシーに反する」という見解として受け取ったのだ。そこでがるぜんは、「配信元のガイドラインにより、切り抜き動画の投稿を認められている」「翻訳や編集、解説により独自の価値を提供している」「AI等による自動生成ではない」とYouTubeに異議申し立てをしたとのことだが、再審査請求は却下。担当者からは「他者が制作したコンテンツをアップロードする行為は、再利用コンテンツに関するポリシーによって禁止されている」「所有者から書面により許可を得ている場合でも、他者のコンテンツのプロモーションは付加価値とはみなされない」というフィードバックがあったことも明かしている。 がるぜんのYouTubeやXでの投稿をみたユーザーのなかには、「切り抜き動画の投稿自体が禁止」と捉えてしまった方もいたようだが、YouTubeは二次創作動画の投稿を禁止しているわけではない。がるぜんは今月10日に再度この件に関する動画を投稿。あくまでもYouTubeのスタンスは、「他者のコンテンツを借用する場合は大幅に変更して独自性をもたせる必要がある」というものであると釈明している。 がるぜんのように切り抜き動画の収益化が停止したチャンネルが出てきたことによって影響を受けるのは、何も切り抜き職人だけではない。これまで恩恵を受けてきたYouTuberたちには今回の一件で、どういった影響、変化が出てくるのか。まず切り抜き動画を投稿するチャンネル数は減少すると思われるが、その分、長尺動画をメインに制作するYouTuberや長時間配信を行うクリエイターは、切り抜き動画にとってかわるショート動画に力を入れ始めることが考えられる。そのほか、切り抜き職人を巻き込んだチームを編成し、自身のチャンネルで切り抜き動画を投稿するといったYouTuberが出てくる可能性もありそうなのだ。 この点についてホロライブに所属するVTuber・アキ・ローゼンタールは、7月10日に行った配信でこの件に言及。「アキロゼチャンネルで切り抜き動画をあげたいなと思ってる」と話すと、「切り抜き動画師さんをお抱えしたい」と、有償で切り抜き動画の制作を依頼したいと発言。「お金稼ぎとして使われれてしまう、簡単に愛のない動画が作れてしまうこんな時代だからこそ、愛のあるものとかセンスが光るものだったりとか、そういったところが正当に評価されてほしい」と切り抜かれる側の思いも吐露しつつ、一緒にチャンネルを盛り上げる仲間として、愛ある切り抜き動画を作れる人物を自身のチャンネルに迎え入れたいと述べている。 アキロゼの発言をみても、切り抜き動画の収益化停止はYouTubeクリエイターたちのチャンネル運営に影響を与えることは明確だ。切り抜き動画を公認していたYouTuberたちがどういった判断を下すのか、今後注目が集まるだろう。
せきぐちゆみ