【石破氏はなぜ負けた】「敵はもっと近くに置け」ゴッドファーザーは言ったのに…ブレない異端者がブレ、失った信用
■ 政治はレバレッジだ 「ブレない異端者」として人気のあった石破茂氏がトップに立った途端、ブレブレになったからだ。 政治はレバレッジだ。「選挙選抜」の総理総裁は「試験選抜」の官僚機構に対し大きなレバレッジを持つ。テコの原理が働くためには、重心がブレない、曲げない、崩れないことが大事。 政治のレバレッジを失うことは政治力の低下を意味する。それは国民の「信用」を失うということに繋がる。 石破さんは政治改革が原点だった。そのために離党までした。自民出戻りで総理になったのは石破さんしかいない。あくまでも石破さんは異端者なのだ。 前にも書いたように、岸田内閣の3年間、給料は上がったが物価高と社会保険料アップで家計は貯蓄を取り崩す状況が続いている。 ◎【党内抗争不可避の石破政権】短命に終わるか? 歴代の政権崩壊とピタリと合致する、あるグラフが示す“不吉な法則” そこへ特権階級の国会議員が無税のパーティー収入を手にし、かつ、裏金化していたことに国民は怒っているのだ。 この怒りを鎮めるため石破さんは登場した。解散の前に野党と組んでも企業団体献金の禁止とか政治資金のドラスティックな改革を進める必要があった。 その場合、自民党内の反発は尋常でないレベルになっただろう。その間、主要裏金組に対しては刺客を立てる準備をするとかやっても良かったのだ。
■ 石破さんにはドンデン返しを仕掛ける反射神経がなかった 「自民党をぶっ壊す」と小泉純一郎さんが同じ森喜朗派でありながら登場して大ブレークした。「金丸ゼネコン脱税事件」の後、金丸派の中枢にいた小沢一郎氏らが離党・新党結成で政権交代までやってのけた。 政治劇場には舞台のドンデン返しの仕掛けが必要になる。 ところが、石破さんにはそのような反射神経がなかった。直感・実感・大局観を伴った構想力とブレーンが決定的に欠けていた。 今、石破さんに起きているのは過去の石破発言のブーメラン現象である。 例えば、2007年、第一次安倍内閣の時の参議院選挙は、「消えた年金記録」のリーク情報によって安倍内閣の支持率はガタ落ち、ボロ負けだった。 石破さんは安倍退陣を主張。久米宏「ニュースステーション」で、閣僚だった私と「対決」した。 私は「参議院選挙は政権選択の総選挙と違い、大関の角番みたいなもんだ」と石破さんに反論したところ、番組が終わってから山のような批判メールを頂戴し、辟易した記憶がある。 デタラメ年金記録のリークが、私の担当する「天下り斡旋の全面禁止」という改革に対する「クーデター」であるのは明らかだったが、石破さんの退陣論の方が分かりやすかった。 首班指名を乗り切ったとしても、ドラスティックな政治改革や経済政策の変更をしない限り、今後、石破退陣論は広がるだろう。それは過去の石破さんの言動から受ける攻撃でもある。 >>この記事の続きは「【キャスティングボート握る国民民主】なんと8.7倍のレバレッジ…国民・玉木代表に絶好機到来、連立話は参院選後か」へ
渡辺 喜美