年末年始の街を彩る「葉ボタン」がピンチ 気候変動、後継者不足、物価高騰などが影響 広島
広島ニュースTSS
年末年始の街を彩る「葉ボタン」。 正月飾りにも欠かせない「葉ボタン」が、今、不足する事態となっています。 年の瀬になるとよく見かける「葉ボタン」。 門松などの正月飾りには欠かせない「葉ボタン」ですが、切り花としても、人気の高い商品です。 【広島市中央卸売市場 花満・井上博英 営業本部長】 「最近はお正月には欠かせない商材です。色目とこの季節にしかないものという花なので、非常に引き合いが強い」 <生産者> 「いらっしゃい、いらっしゃい。葉ボタン祭りいらっしゃいませ」 先週、県内有数の「葉ボタン」の生産地、東広島市黒瀬地区で行われた「葉ボタン祭り」。 地元の生産者が続けてきた恒例のイベントです。 毎年、楽しみにしているお客さんも多く、飛ぶように売れていきました。 年の瀬を彩る「葉ボタン」。 今、その生産がピンチに陥っています。 黒瀬地区では、20年ほど前から、「葉ボタン」の生産に力を入れてきました。 「葉ボタン」を栽培する森本さん。 およそ1万9千株を栽培しています。 【花畑もりもと・森本俊充さん】 「植えてすぐの時から雨が降らなかったので、最初の段階で枯れたのもが今年は結構あった」 今年は、害虫の被害も多かったといいます。 【花畑もりもと・森本俊充さん】 「今年は10月も結構暑かったので、普通だったら虫が収まってくる頃でも、虫が元気だというか、ここらでもちょっと虫に食われているのですが、こうしたちょっとした喰い跡でも市場には出せない」 気候変動だけではありません、県内の「葉ボタン」の生産量が減少したのは、6年前に発生した「西日本豪雨災害」の影響が大きいと関係者は話します。 【広島市中央卸売市場 花満・井上博英 営業本部長】 「数年前に呉で災害があって、(葉ボタンの)大きな産地だったので、そのあたりの畑がことごとく雨で流されて、それ以降は産地が復活できないこともあって広島県内では生産が減っています」 県外からも入荷しますが、市場では、葉ボタン不足が続いています。 【広島市中央卸売市場 花満・井上博英 営業本部長】 「国内では和歌山を中心に四国あたりで生産をたくさんしているが、まだまだ足りない状態が続いています。10年ほど前に比べると1.5倍から1.8倍くらいまで値段が上がっています」 また、今、農家が共通して抱える問題が、ここでも起こっていました。 物価の高騰による生産コストの上昇です。 【花畑もりもと・森本俊充さん】 「(生産コストが)倍上がっているという農家もいますが、うちは、3割くらいは上がっていると思う。これから下がるという要因はあまりないので、まだ(コストが)上がるのかなという感じはしています」 もう一つは、後継者の問題です。 かつて、この地区では、およそ15軒の農家が、「葉ボタン」を生産していました。 それが、現在は半数の7軒。 県内の個人経営の農業従事者の平均年齢は70歳を越えています。 「高齢化」と「物価の高騰」、「賃金の上昇」などが、生産農家の減少に、拍車をかけています。 【広島市中央卸売市場 花満・井上博英 営業本部長】 「瀬戸内海沿いの因島や向島の産地もほとんどなくなっている状態で」 【花畑もりもと・森本俊充さん】 「どうやって葉ボタンの産地を残していけばいいのか考えるところではある」 これまで当たり前だったことが、当たり前ではなくなる時代がやって来ました。 【広島市中央卸売市場 花満・井上博英 営業本部長】 「特に日本はきれいなものを好みますが、実は花も少し曲がったものや、少し葉っぱが小さいものでも十分に楽しめますし、そのあたりの幅をもう少し広げて、市場としても扱って行きたいと思っていますし、生産を増やしてもらえるような働きをしていきたい」 時代の変化とともに、今、日本の農業は、岐路に立たされています。
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